2003 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞増殖因子(HGF)による腸粘膜上皮幹細胞の分化・増殖と腸粘膜再生医療の試み
Project/Area Number |
15659174
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
坪内 博仁 宮崎大学, 医学部, 教授 (60145480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都 浩文 宮崎大学, 医学部, 助手 (20347058)
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Keywords | 肝細胞増殖因子(HGF) / 炎症性腸疾患 / デキストラン硫酸(DSS) / 潰瘍性大腸炎モデルラット / 遺伝子組換えヒトHGF / 腸上皮幹細胞 / c-kit / 骨髄細胞 |
Research Abstract |
【目的】肝細胞増殖因子(HGF)は上皮細胞の遊走と増殖を亢進させることから、炎症性腸疾患における腸粘膜修復治療への応用が期待される。本研究ではHGFの腸粘膜修復における分子機構と、腸粘膜上皮幹細胞の増殖・分化に及ぼす影響を明らかにする。本年度はデキストラン硫酸(DSS)誘発潰瘍性大腸炎モデルラットに遺伝子組み換えヒトHGF(rhHGF)を投与し、その効果を検討した。 【方法】Wistarラットに5%DSS水溶液を7日間、1%DSSを4日間自由飲水させ、腸炎を誘発した。5%DSS投与5日目からrhHGF200mg/日または生理食塩水(対照群)を腹腔内に浸透圧ポンプで持続投与し、(a)血中ヒトHGF濃度、(b)体重を経時的に測定した。またrhHGF投与6日目に屠殺し、(c)大腸びらん面積と全長、(d)病理組織、(e)免疫組織化学染色によるPCNA陽性細胞、c-kit陽性細胞、(f)Western blot法によるc-Metチロシンリン酸化を検討した。 【成績】(a)血中ヒトHGF濃度はHGF群投与では上昇した。HGF群は対照群に比して、(b)体重減少は軽度で、(c)びらん面積は縮小、大腸短縮が改善した。また、HGF群は(d)著しい粘膜上皮の再生を認め、(e)PCNA陽性細胞は増加していたが、c-kit陽性細胞は数が少なく、明らかな有意差はなかった。(f)c-Metチロシンリン酸化は亢進していた。 【考案】大腸粘膜のc-Metリン酸化、上皮細胞のDNA合成活性促進を介したHGFの大腸粘膜修復作用が示された。以上から、HGFが炎症性腸疾患の粘膜修復療法として、新しい治療法となる可能性が示唆された。今後、幹細胞のマーカーの一つであるc-kitの発現や骨髄細胞の腸粘膜再生への関与についてはさらなる検討が必要である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Tahara Y, Ido A, Tsubouchi H., et al.: "Hepatocyte growth factor facilitates colonic mucosal repair in experimental ulcerative colitis in rats."J Pharmacol Exp Ther.. 307・1. 146-151 (2003)