2003 Fiscal Year Annual Research Report
転写ターゲティングシステム構築による膵島ホルモン分泌制御機構の解析と遺伝子治療
Project/Area Number |
15659213
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡 芳知 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (70175256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 明 東北大学, 医学部附属病院, 医員
石垣 泰 東北大学, 医学部附属病院, 助手
石原 寿光 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (60361086)
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Keywords | インスリン分泌 / 膵ラ島 / グルカゴン / ジカルボン酸輸送担体 / グリセロールキナーゼ |
Research Abstract |
膵ランゲルハンス島の内分泌細胞間にはクロストークが存在し、互いのホルモン分泌を影響しあうことによって精妙なグルコースホメオスターシスを達成していると考えられてきた。しかし、このクロストークの存在が、それぞれの細胞応答の複雑さを増し、個々の細胞タイプの刺激に対する応答の研究、ひいては細胞間の連関の解析を困難なものにしてきた。そこで、膵ランゲルハンス島内のα、β細胞を特異的に刺激し、活性化させることにより、2つな異なるタイプの細胞の特性を明らかにし、さらに両者のクロストークについて検討した。方法としては、α、β細胞のミトコンドリア代謝を別々に活性化させるため、TCAサイクル中間体のジカルボン酸を細胞に取り込む細胞膜上の輸送担体であるジカルボン酸輸送担体(NaDC、Na依存性Dicarboxylate Transporter)をα、β細胞に特異的にアデノウイルスを用いて発現させた。またα、β細胞の解糖系を細胞種特異的に活性化させるため、グリセロール代謝の必須酵素であるグリセロールキナーゼ(GlyK)を、Rat GlyKのcDNAを組み込んだアデノウイルスを作成して発現させた。なお、これらのアデノウイルスは、細胞種特異的にCreリコンビネースを発現するアデノウイルスとの共感染により、細胞特異的に発現するようにした。TCAサイクル中間体のクエン酸、オキソグルタル酸、コハク酸、リンゴ酸などは、α、β細胞膜を透過できないため通常は代謝されない。また、グリセロールはグリセロールキナーゼの活性が低いため正常のα、β細胞では代謝されない。β細胞にGlyKを発現させた場合、膵島はグリセロールでインスリンを分泌した。β細胞にNaDCを発現させると、リンゴ酸などTCAサイクル中間体はインスリン分泌を増強し、興味深いことにグルカゴン分泌は抑制された。一方、α細胞のみにNaDCを発現させた膵島ではリンゴ酸により、グルカゴンの分泌が増加した。以上より、α細胞を特異的に直接活性化させるとグルカゴン分泌は増加するが、β細胞を活性化させると間接的にグルカゴン分泌は抑制される。α細胞の分泌がβ細胞とのクロストークにより制御されていると考えられた。
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[Publications] Yujiri T, Nawata R, Takahashi T, Sato Y, Tanizawa Y, Kitamura T, Oka Y: "MEK kinase 1 interacts with focal adhesion kinase and regulates insulin receptor substrate-1 expression"J Biol Chem. 278. 3846-3851 (2003)
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[Publications] Nawata R, Yujiri T, Nakamura Y, Ariyoshi K, Takahashi T, Sato Y, Oka Y, Tanizawa Y: "MEK kinase 1 mediates the antiapoptotic effect of the Bcr-Abl oncogene through NF-κB activation"Oncogene. 22. 7774-7780 (2003)
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[Publications] Fujishiro M, Ogihara T, Tsukuda K, Shojima N, Fukushima Y, Kimura S, Oka Y, Asano T: "A case showing an association between type 1 diabetes mellitus and Kabuki syndrome"Diabetes Res Clin Pract. 60. 25-31 (2003)