Research Abstract |
我々の開発した新規被覆材は,組織刺激性の少ない熱可塑性ウレタンで作成されたシート状多孔体で,体内埋め込み時に生体組織の浸潤性を高めるための約0.2〜1.0mm径の三次元網状構造を有したものである.また本素材は適切な強度と柔軟性を保持し,様々な形状に加工することが容易で,耐久性にも優れている.今年度の研究では,この被覆素材の組織浸潤性を検討する目的で,様々な孔径に制御した円柱状の多孔体(孔径:約500,450,250,200,150,100,50μm)をシリコンチューブ内に挿入したものを作製し,これら試験片を成ヤギに皮下に埋め込み,一ヶ月後摘出,そしてこのチューブ両端から侵入した肉芽組織の浸潤長を測定することにより,新規被覆材の組織浸潤性とした.結果,ヤギ皮下に留置された被覆材の摘出時には,被覆材は生体組織と密に接着し,互いの分離は非常に困難で,被覆材内が器質化された組織で充満しているのが観察された.組織浸潤長は孔径の大きさにほぼ比例し,7.25,7.33,7.54,6.59,5.41,5.62,4.03mm(n=10)であり,我々の開発した新規被覆材は,従来人工臓器に使用されてきた多孔体より優秀な組織浸潤能を示し,さらに孔径の大きな2群においては,組織学的に膠原線維を主体とする結合組織浸潤が良好であった.また,被覆材内の網状構造内には,生体の異物に対する拒絶防御反応ないし炎症反応は極めて軽微であった.以上の結果より,我々の開発した新規被覆材は,埋め込んだ人工臓器と周囲組織を密に癒着させるために充分な組織浸潤性を有し,機械的な強度を保持できることが示され,その孔径を変化させることにより,多孔体内へ浸潤する組織の浸潤性を制御可能なことが示された.
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