2003 Fiscal Year Annual Research Report
Smacペプチドを用いての悪性グリオーマに対する分子標的治療の研究
Project/Area Number |
15659337
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
甲村 英二 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30225388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 淳史 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (00346256)
佐々木 真人 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80314483)
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Keywords | Smac / Diablo / Apoptosis / 分子標的治療 / 悪性グリオーマ / 治療耐性 / IAP / Caspase |
Research Abstract |
実験脳腫瘍、特に治療耐性を有し細胞死機構に障害が生じた悪性グリオーマ細胞におけるアポトーシス誘導の効率化を目的とした治療実験を施行した。ミトコンドリアより放出されるペプチドSmac/DIABLOは、アポトーシス抑制蛋白(IAP)を阻害しcaspase 9を活性化させてアポトーシスを促進させる働きを持つが、この活性促進機能にはSmac N末端4アミノ酸残基が必須である。今回はこのN末端4個を含む8アミノ酸残基と細胞膜透過構造を持つペプチドを合成投与することにより、IAPを阻害しアポトーシスを促進させ、治療効果を増強させる実験を行った。 まず第一段階として、対象となる樹立悪性グリオーマ培養細胞に対して抗腫瘍剤エトポシドを投与しアポトーシスが誘導される事を確認、更にエトポシド投与の際にミトコンドリア内のSmacが経時的に減少し、細胞質内に増加すること事を認めた。以上よりエトポシド誘導性アポトーシスにおいてSmacがミトコンドリアから細胞質内に放出されることを証明した。このことは悪性グリオーマ細胞においてSmacにより阻害されるIAPが細胞質に存在することが示唆された。第二段階として、合成したペプチドによる治療実験系を構築した。まずは導入条件を検証した結果、合成ペプチドを濃度10μg/mlとし投与、6時間後に最も効率良く細胞質内に導入されることを明らかとした。エトポシド40μg/mlに加えて合成Smacペプチドを投与することにより腫瘍細胞死が有意に促進されることが示された。現在は低濃度エトポシドとの併用による効果の増強、caspase活性の定量やFCMなどのストラテジーを展開しつつある。更に耐性細胞を対象としてアポトーシスの誘導増強効果を検証中である。 今後、動物実験においてその効果と安全性を検証し、更には他の抗腫瘍薬や放射線治療との併用により新たな悪性グリオーマ治療のストラテジーとして精力的な研究を行う予定である。
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