Research Abstract |
整形外科疾患では種々の病態により関節水腫の発症をみる.いわゆる"水がたまる"といった症状であるが,疼痛を伴わない場合でも,関節可動域の制限など苦痛を伴う症例がある.日常臨床においては,関節穿刺,副腎皮質ホルモンの関節内投与などの対症療法がとられることが多く,しばしば再発する.関節水腫をきたす個々の疾患たとえば関節リウマチ,変形性関節症などの疾患解明は著しい進展をしているものの,関節水腫そのものの発生機序の分子機構の解明にはあまり進展はない.本研究では変形性膝関節症(OA)患者,関節リウマチ(RA)患者の滑膜組織,外傷後の関節水腫患者の滑膜組織の免疫組織染色を比較検討することと,in vivoの実験系にて,滑膜組織から得られた滑膜培養細胞を用いて,アクアポリン発現の誘導因子,抑制因子を明らかにすることを目的としている. 本年度は,昨年度に続き関節水腫をきたす各疾患の滑膜組織の免疫組織化学染色を行った.すなわちRA, OA患者の人工膝関節置換術,膝関節鏡視下手術のさいに患者の承諾を得て採取した滑膜組織を抗アクアポリン-1,7,8,9抗体を用いて,免疫組織化学染色した.水腫の著明な症例では,滑膜表層細胞にアクアポリン-1の高発現を認めた.この発現は水腫を引き起こすために発現しているのか,あるいは改善するために発現しているのかは明らかでないため、この分子機構を解明する必要がある。現在さらに滑膜培養細胞を用いて,RT-PCR法によりアクアポリン-1 mRNA発現を判定量的に測定し,さらにアクアポリンの誘導因子,抑制因子を明らかにする予定である.
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