2003 Fiscal Year Annual Research Report
脳磁図を用いた耳鳴病態解明と病態に基づく耳鳴治療の可能性に関する基礎的研究
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15659401
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川瀬 哲明 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50169728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 利徳 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (00336166)
中里 信和 財団法人広南会広南病院, 臨床研究部長(研究職) (80207753)
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Keywords | 耳鳴 / 脳磁図 / マスカー療法 / tonotopic organization |
Research Abstract |
原因不明の耳鳴の発生機序としては、いわゆる「ファントムペインによる耳鳴」(四肢切断後の切断部の存在間隔、痛みと同様の機序としての耳鳴)など、何らかの中枢メカニズムの関与が類推されており、最近、PET、MEGなどで聴覚野の活動状態の非対称や、聴覚野の再構築が示され、その傍証がなされている。今回我々は、脳磁図を用いて耳鳴の病態分類を行い、ファントムペインメカニズムの関与が示唆される耳鳴では、病的状態により再構築された聴覚野に別の刺激を加えることで、聴覚野の再構築状態を変化(改善のための再々構築)させることが可能かどうかを検討する。 本年度は、2年計画の1年目で、耳鳴病態に影響を与える刺激として古くより知られている雑音の影響を心理音響的に検討した。比較的難治性で重症度の高い耳鳴症例を対象に、マスカー治療器を適応、耳鳴の自覚的重症度、客観的評価の変化を検討した。その結果、約80%の症例で、耳鳴の軽減効果を認め、その有効性が確認された。一方、マスカー負荷時の聴覚反応への影響を観察する目的で、雑音負荷時の聴性脳磁界反応を測定し、背景雑音下のトーンバースト刺激に対する聴覚野の周波数地図と両耳に提示する信号の位相の影響を観察する両耳マスキングレベル差の測定を健聴人を対象に実施した。 背景雑音下の250、1000、4000Hzの2オクターブ間隔のトーンバーストに対する周波数地図は、概ね従来の報告に一致した傾向を認めたが、周波数地図のorganizationが明瞭でないと思われる場合も少なからず存在した。一方、背景雑音下の信号音に対する反応は、両耳に提示する信号音の位相に影響強く受け、両耳同位相の場合に比べ、対側の信号音の位相を反転させて場合は、低周波数信号優位に閾値の低下を認めた。この、聴性脳磁界反応に認められたマスキングレベル差については、現在、論文投稿中である。
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