2003 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者ケアにおけるアニマル・セラピーの構築-精神行動上の問題軽減に向けて
Project/Area Number |
15659526
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大西 奈美子 旭川医科大学, 医学部, 助手 (50344560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新山 雅美 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (70001534)
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Keywords | アニマル・セラピー / 動物介在活動(AAA) / 高齢者 / 精神看護 / ドックセラピー / 痴呆ケア / メンタルヘルス / 施設入所者 |
Research Abstract |
平成15年度研究課題として、アニマル・セラピーの効果に関する基礎的研究を「動物訪問活動が身体・精神機能に与える影響・参加者に体験される意味を明らかにする」という目的で行い、結果が得られたので報告する。 【身体的側面からの小型犬に対する反応の評価】犬との交流時の頭部体表温度の変化を、20歳代のボランティアとAlzheimer病の82歳の女性を対象とし、Thermographにより予備調査した。犬をみた直後に心拍数の増加が見られ、頚動静脈付近及び眼の周囲、額、手に温度の上昇が見られ、特に犬を抱いた後の手の温度は32.5℃から34,9℃へと大幅に上昇した。犬との交流は心機能亢進と血液循環改善に有効である可能性がある。 【精神機能評価尺度を用いた高齢者の小型犬訪問による評価】犬の交流による影響を研究協力施設に入所している高齢者8名を対象に、GBSS-J尺度を使用し半年間で評価した。結果、参加者の自発性および感情機能に有意に改善があり、GBSS-Jの項目の中では特に空間見当識、集中力、周囲の反応への対応、感情の安定性において有意に改善が認められた。 【小型犬訪問活動の場が高齢者にもたらす意味:現象学的分析】痴呆高齢者がとらえる犬との交流の場の意味について分析し、以下の6つのテーマ:1.かわいい犬にあえる楽しみの場、2.施設での個々の生活に変化をもたらすもの、3.他者との交流の場、4.過去の人生体験を想起する場、5.自己を表現できる場、6.これまでの人生で培われた犬に対する愛着を感じる場、が抽出された。これはT.Kitwood(1997)が提示する痴呆高齢者の心理的ニーズと関係しており、犬の場は高齢者の心理的ニーズを満たす影響があると考えられる。 今後、さらに継続的な評価と個別の経過観察による評価・検討により、高齢者への有効な動物の関わらせ方、動物介在療法の勧め方について検討が必要と考える。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 大西奈美子, 新山雅美, 田端一基: "痴呆高齢者に語られた小型犬訪問活動(AAT)の意味"日本痴呆ケア学会大会抄録集. 126 (2003)
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[Publications] 新山雅美: "動物介在療法(Animal Assisted Therapy)-特別養護老人ホームでの小型犬を用いたAAT支援の実践-"日本保健医療行動科学会 年報. No.18. 36-47 (2003)
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[Publications] 新山雅美, 新山春江, 森田茂, 杉山善郎: "小型犬の行動様式と特別養護老人ホーム入居者の反応様式との関係調査"高齢者問題研究. 19. 119-127 (2003)
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[Publications] 河村(大西)奈美子, 新山雅美, 新山春江, 金子正恵: "施設入所高齢者への小型犬によるアニマル・セラピー(AAT)の効果"第19回日本老年精神医学会大会. (2004)
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[Publications] 新山雅美: "小犬とのふれあいを通した高齢者ケア"第12回全国老人ケア研究集会(京都市 京都テルサ 7/10). (2004)
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[Publications] 新山雅美: "実務者研修用テキスト/新・痴呆高齢者の理解とケア -old cultureからnew cultureへの視点-"メディカルレビュー社(東京都文京区湯島3-19-11). (2004)