2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15681004
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
石井 真史 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門・XAFS・分析チーム, 主幹研究員 (90281667)
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Keywords | Si極薄酸化膜 / 電子閉じ込め / ケルビンフォース顕微鏡 / X線吸収スペクトル / 化学状態マッピング / カーボンナノチューブ / 局所歪 / 顕微分光 |
Research Abstract |
本年度行ったことは、(1)開発した測定装置を用いたSi極薄酸化膜のX線吸収測定、および(2)単一カーボンナノチューブの量子閉じ込め状態の観測、である。以下にそれぞれの研究成果の概要を述べる。 (1)については、前年度試料として選んだSi極薄酸化膜の測定をさらに進め、本課題のアイディアによるX線顕微分光に成功した。特に、自然酸化膜、熱酸化膜といった薄膜の形成法の違いによって酸化状態が異なることが分光スペクトルから明らかになった。これは表面Siと結合している酸素の数の違いであることが判明した。更に化学状態のマッピングを行ったところ、酸化状態は試料面内で分布を持つことを見出した。特筆すべきは、わずか4nmの構造内の酸化状態分布を区別できた点である。すなわち空間分解能はX線を使った手法としては世界最高水準の1nm以下を達成できた。Si極薄膜は極微細デバイスの性能を決定する材料であり、本手法が産業利用においても極めて有用であることを実証できた。 (2)については、更に重要度の高い材料であるカーボンナノチューブに本課題の手法を適用し、単一のナノチューブへの電子の閉じ込めの観測に成功した。注目すべきことは一本のカーボンナノチューブであっても、圧縮、伸縮などの歪がある部分には電子が閉じ込められることを本手法で発見した。この局所歪領域での閉じ込めは、量子ドットとしても使うことが出来、まさに本課題の題目である「走査プローブによる単一量子ドットX線吸収測定」に成功したと言える。また見方を変えると、このような局所歪による電子の閉じ込めは、実際にデバイスを作製する際に不可避的に発生する加工歪による伝導特性の変化を示している。この発見はカーボンナノチューブの産業利用における問題点を提示するものであり、本課題の成果の上に立って新たな研究課題を示すことが出来た。
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