2003 Fiscal Year Annual Research Report
水素クラスターの機能化-高密度水素貯蔵と準室温超伝導の両面から-
Project/Area Number |
15686027
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
折茂 慎一 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (40284129)
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Keywords | 水素クラスター / 錯体水素化物 / リチウム / 高圧水素 / 成膜 / マグネシヴム / 水素貯蔵 / 燃料電池 |
Research Abstract |
本年度は、水素クラスター型(錯体)水素化物のうち水素貯蔵機能の観点で重要な「リチウム-ホウ素-水素系」および「リチウム-チッ素-水素系」に注目して、高圧水素中での反応焼結を利用した合成技術を開発した。更に、これらの多様な水素化物での局所原子振動モードなどのナノ・サブナノ領域での物性測定を進めることにより、脱水素化反応の促進にも成功した。 ・新たに設計したガズ圧縮ブースターとインコネル製反応容器とを組み合わせた高圧水素中での反応焼結により、LiBH_4やLiNH_2などの水素化物の合成が可能となった。この合成技術の確立により、LiをMgなどで(部分)置換した新たな水素化物の合成にも世界で初めて成功した。 ・これらの水素化物に対する顕微レーザーラマン分光測定により、B-HやN-H間の局所原子振動モードを測定することができた。その結果、水素化物を構成する陽イオンの電気陰性度と原子振動エネルギーの大きさに正の相関があることを見出した。 ・更に、水素雰囲気中での熱重量示差熱分析により、これらの水素化物の脱水素化反応温度を系統的に評価したところ、陽イオンの電気陰性度と反応温度には負の相関があることも見出した。すなわち、電気陰性度の大きな陽イオンでの(部分)置換が、低温での脱水素化反応の促進に有効である、という重要な材料設計指針を得ることができた。 ・実際に、LiをMgで(部分)置換した新たな水素化物を合成してその脱水素化反応を評価したところ、従来材料より180℃も低い100℃以下の温度領域からでも脱水素化反応が進行し始めることが確認できた。 その他、成膜(真空蒸着)法での合成技術との組み合わせにより、固体高分子型燃料電池への応用を目指した新たな水素クラスター型水素化物を合成して、その水素貯蔵機能を評価した。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] S.Orimo, Y.Nakamori, A.Zuttel: "Material properties of MBH_4 (M = Li,Na,and K)"Materials Science & Engineering B. 108. 51-53 (2004)
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[Publications] Y.Nakamori, S.Orimo: "Li-N based hydrogen storage materials"Materials Science and Engineering B. 108. 48-50 (2004)
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[Publications] Y.Nakainori, S.Orimo: "Destabilization of Li-based complex hydrides"Journal of Alloys and Compounds. 印刷中. (2004)
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[Publications] Y.Nakamori, T.Yamagishi, M.Yokoyama, S.Orimo: "Synthesis of LiNH_2 film by vacuum evaporation"Journal of Alloys and Compounds Letter. 印刷中. (2004)
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[Publications] 中森裕子, 折茂慎一: "高密度水素貯蔵材料としてのリチウム系錯体水素化物の研究-元素置換による材料設計の必要性-"燃料電池. 3・3. 20-23 (2004)
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[Publications] 中森裕子, 折茂慎一: "リチウム-水素系材料での新たな機能設計"まてりあ(日本金属学会会報). 42・11. 822-828 (2003)
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[Publications] 中森裕子, 折茂慎一(共著): "図解 燃料電池のすべて (高密度水素をクラスター状にして貯蔵する-燃料電池技術を強力に支援する錯体系の水素貯蔵材料-)"工業調査会. 263 (2003)