Research Abstract |
近年,モバイルインターネットに対する需要の増加と,携帯電話・無線LAN・PHSなどの多様な無線アクセス技術の発展に伴い,IPを基盤とした無線統合網の構築が注目されている.このようなIPベースの移動体通信において,モビリティ制御は重要な技術課題である.既存の方式である階層化モバイルIPでは,ネットワーク内に制御エリアが広い高階層のMAP(Mobility Anchor Point)と制御エリアが狭い低階層のMAPを用意し,移動範囲が広い高速な端末を高階層MAPで制御する一方で,それ以外の移動範囲が狭い端末を低階層MAPで制御することにより,ネットワーク資源の効率的な分散利用を図ることが可能である.しかしながら,端末の移動特性を把握する具体的な手段については,全く規定されていない. そこで本研究では,端末の移動速度に着目して移動特性を分類することを提案している.具体的には,エージェント技術を導入し,基地局に存在するネットワークエージェント(以下NA)と,端末で生成されるユーザエージェント(以下UA)の協調によって移動特性を把握する.この手法は,GPSのような位置認識機能を搭載しない端末でも利用可能であり,また,MAPの設置位置や階層構造が変化しても,NAに与える知識を変更するのみで効率的なモビリティ制御を維持できるため,拡張性に優れている.また,複数の無線IFを利用できる環境であれば,UAは常に利用可能な無線IFの状態を監視して最適なものを選択し,NAはそれに応じて経路の切り替えや利用帯域の増減を行う.このように,端末とネットワーク双方にエージェント技術を導入することにより,柔軟なモビリティ制御が可能となる. 平成16年度においては,無線基地局が地理的に不均質に敷設されている場合においても,効果的な負荷分散を自律的に行う手法について検討し,NAに与える知識を動的に変更することでこれを実現する方式を確立した.
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