2003 Fiscal Year Annual Research Report
バイオリン演奏のフレーズ演奏における動的な感性表現に関する基礎研究
Project/Area Number |
15700203
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
渋谷 恒司 龍谷大学, 理工学部, 講師 (20287973)
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Keywords | 感性 / バイオリン演奏 / 音色 / 動的変化 |
Research Abstract |
本研究では,バイオリン演奏を例として,感性情報である音色がフレーズ演奏にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的としている.そこでまず,熟練者としてアマチュア演奏家2名を被験者とした実験を行った.被験者には6対12個の音色を提示し,各音色のイメージで2種類の4小節程度の楽譜を演奏してもらった.計測項目は弓速と弓圧である. 分析の際には,動的な影響として,弓圧と弓速の演奏中の変化に着目し,その変化を表す指標としてダイナミックレンジを定義した.これは演奏中の各パラメータの最大値と最小値の比の対数をとるものであり,単位はデシベルとなる.このデータを分析した結果,弓速については音色表現語によってそれほどダイナミックレンジには差が出なかった.これに対して,弓圧は,ダイナミックレンジの値自体は小さいが,変化の割合は音色表現語によって比較的大きな差が出た.これは,音色を変化させる際,弓圧の変化をつけていることを示している.一音の研究においては,弓圧の値そのものも変化させることが明らかとなっているが,フレーズの際はこれに加えて,弓圧の変化幅も変えているものと考えられる.次に,ダイナミックレンジと,弓圧や弓速の絶対値との関係をグラフ上に布置して調べた.その結果,布置の位置の傾向がほぼ同じ音色表現語と,異なる音色表現語があることが分かった.また,同じ被験者間で異なる楽譜を演奏した場合は,おおむね一致した傾向が見られたが,一部の音色表現語では若干異なる傾向も見られた.このように,熟練者の演奏実験を通して,動的な感性表現の実現のための基礎データを得ることができた. 本研究では機械ハードウエアによるバイオリン演奏の実現も目指しており,今年度は,7自由度人間型アームにより,弓速と弓圧を変化させ4種類の単音生成を実現するとともに,運指機構の製作も行った.
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