2003 Fiscal Year Annual Research Report
知覚過程における「メタ情報」の取得・利用と加齢による影響
Project/Area Number |
15700220
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田中 美帆 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助手 (50345419)
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Keywords | メタ情報 / 認知的加齢 / 注意 |
Research Abstract |
本研究では、生体の知覚過程におけるメタ情報、すなわち「情報に対する情報」の取得メカニズムを視覚実験により検証した。さらに、メタ情報利用の加齢による影響を明らかにし、高齢者と生体の情報取得に関する新規性の高いデータを提供することが目的であった。初年度である本年度は、実験刺激の作成と学生のボランティアを参加者とした予備実験を行い、刺激および課題の選定を実施した。予備実験の結果を基に、高齢者と若年者を対象として視覚実験を施行し、年齢差に関連したメタ情報取得効率の基礎データを得た。具体的な成果は以下の通りである。 実験の課題として、ランダムな図形の遅延マッチング課題を採用した。ただし、前刺激と後刺激の間には手がかり図形が提示され、その手がかりのメタ情報を取得することでマッチング課題の遂行が容易になるよう工夫した。手がかりの形態、色、およびその組み合わせが、ある一定の確率で前刺激と後刺激の一致・不一致に対応するよう設定し、その確率をメタ情報とした。実験参加者のうち、20代および30代の参加者を若年者群、60代から80代の参加者を高齢者群とした。課題の正答率と反応時間を指標に、高齢者と若年者のメタ情報取得過程を比較し、次の結果を得た。1.若年者、高齢者群に共通して、メタ情報を獲得することにより課題の反応時間が縮小した。この結果は、メタ情報の取得による課題遂行時の認知的負荷の減少を示唆する。2.高齢者群にとって、課題と手がかり図形の様相の違いは、メタ情報の取得を促進しない可能性が高い。3.高齢者群の中でも特に80代の参加者では、手がかり図形が課題の遂行に役立つことを明示的に表象し、注意を手がかり図形に捕捉させてもなおメタ情報の獲得が困難であった。以上の結果を踏まえ、次年度はメタ情報取得と注意の相互作用に焦点を当てた実験研究を引き続き実施する。
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