2004 Fiscal Year Annual Research Report
操作的動作の運動イメージに基づいた物体認識メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
15700221
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉尾 武志 京都大学, 情報学研究科, 助手 (60335205)
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Keywords | 道具 / 日常物体 / 構造知識 / 意味知識 / 運動計画 / 自由度 / 後部頭頂皮質 |
Research Abstract |
道具などの日常物体を把持するときに無意識的に取っ手に対して手を伸ばす現象は,道具を構成している部分間の3次元的な構造に関する知識と,道具をどのように使用したらよいかに関する知識の統合が脳内で行われていることを示唆している.こうした統合メカニズムを明らかにすることは,物体に対する操作的動作の知識が物体認識において果たす役割を解明する上で重要であるといえる.本年度は,こうした統合過程の脳内基盤に関する検討を行った.日常的な物体に対する把持と関連した構造特性として,大局的な伸長性と局所的な特徴があげられる.実験では,これら2種類の特性がそれぞれ異なる4種類の物体(ハンマー,定規マグカップ,小ボトル)の画像を用いて,到達把持運動のイメージ化課題を行った.事象関連型fMRIによって脳活動の計測を行い,4種類の物体で共通した活動がみられた脳内領野を結合解析によって検討した後,物体の違いによる活動の変調を検討するためにROI解析を行った.その結果,両側の視覚関連領野,左優位の頭頂皮質から中心前回にかけての領野,そして右優位で小脳に活動がみられた.これらの領野の活動は先行研究と一致するものであった.さらに,ROI解析の結果,把持に関連した頭頂間溝前外側領野(AIP)ではマグカップのみが有意に高く,到達に関連した頭頂間溝内側領野(MIP)や上頭頂小葉(SPL)では小ボトルの活動が他の3つよりも有意に低かった.これらの結果は,いずれも運動計画における自由度と関係していると考えられる.把持を行う物体の位置と手の形状に関する自由度が物体の構造知識と意味知識から検索され,到達把持運動における自由度が決定される.後部頭頂皮質はこうした過程に関与していることが示唆された.
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