2004 Fiscal Year Annual Research Report
離散条件付分布からの効率的なサンプリング手法と分割表解析に関する研究
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15700230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 敏 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 助手 (90332618)
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Keywords | 分割表解析 / マルコフ連鎖・モンテカルロ法 / 対数線形モデル / 分解可能モデル / グラフィカルモデル / グレブナ基底 / トーリックイデアル |
Research Abstract |
分割表解析においてわれわれが遭遇する問題の多くは、集約的には、適当な統計量の仮説のもとでの条件付期待値の推定問題として定式化することができる。マルコフ連鎖・モンテカルロ法は、その数値的評価のためのアルゴリズムのひとつであり、特に、単純なモンテカルロ積分が実行できない(直接的なサンプリングが不可能)というケースを想定している。従来のこの分野の研究は、マルコフ連鎖・モンテカルロ法を実現するために必要な、状態空間上の既約なマルコフ連鎖を構成するための基底(マルコフ基底)を、代数アルゴリズムを用いて計算する方法が主流であった。しかし、この方法には問題点が多く、中でも、代数アルゴリズムの理論的な計算量が、変数の数の2重指数オーダーであることに起因する計算時間の問題、および、変数間に項順序を与える必要があるために、変数間の対称性が崩れ、得られる基底が極小でない、という問題は深刻であった。 本研究では、従来法の問題点を踏まえ、代数アルゴリズムを用いずに、極小なマルコフ基底の導出法とその性質に関するいくつかの結果を得た。本年度は特に、応用上重要となる、マルコフ連鎖の収束の早さに関連したマルコフ基底の性質に注目した研究を行い、結果を得た。これは、得られるマルコフ連鎖が、状態空間の任意の2つの状態間の「距離」(例えば差のノルム)を常に縮小することができる、という性質を持つ場合、このときのマルコフ基底をノルム縮小型マルコフ基底と呼び、その特徴付けを行った。特に重要となるのは、極小マルコフ基底の議論と同様に、すべてのノルム縮小型マルコフ基底に含まれるような基底要素の特徴付けである。これは、理論的には、トーリックイデアルのグレーバー基底との関連が重要であることが示された。また、これまでに得られているいくつかの極小マルコフ基底に関して、それがノルム縮小型であるかどうか、また、極小なノルム縮小型マルコフ基底が一意的に定まるかどうか、などの確認を行った。 本研究で得られた結果は、論文として報告するとともに、2004年12月にラクナウ(インド)さ行われた国際学会、Eleventh International Conference on Interdisciplinary Mathematical and Statistical Techniquesにおいて報告した。
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Research Products
(4 results)