2003 Fiscal Year Annual Research Report
前シナプス性AMPA型グルタミン酸受容体の存在とその活性化機構
Project/Area Number |
15700295
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
佐竹 伸一郎 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (30360340)
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Keywords | 小脳 / グルタミン酸 / GABA / プルキンエ細胞 / 籠細胞 / シナプス前抑制 / 電気生理学 / スピルオーバー |
Research Abstract |
1.下オリーブ核から小脳への登上線維を反復刺激すると,籠細胞-プルキンエ細胞間の抑制性シナプス伝達が短時間抑制されることを発見し,このGABA伝達抑制(脱抑制)はAMPA型グルタミン酸受容体で仲介されるシナプス前抑制の様式で起こることを証明してきた。登上線維の伝達物質AMPA受容体を活性化する仕組みを明らかにするため,グルタミン酸受容体低親和性競合阻害薬(γ-D-glutamylglycine,γ-DGG)を用いた脳スライス-パッチクランプ実験を試みた。低親和性の受容体拮抗薬は,シナプス伝達のような高濃度のグルタミン酸で仲介される反応には阻害作用が弱く,拡散のように低濃度グルタミン酸で誘発されるシナプス過程は強く阻害すると期待される。実際,γ-DGGは,興奮性シナプス後電流EPSCよりも,登上線維刺激によって誘発された脱抑制を有意に強く阻害した。登上線維から大量に放出された興奮性伝達物質は,シナプス間隙から拡散(スピルオーバー)し,近傍のAMPA受容体を活性化してシナプス前抑制を引き起こしたと推定される。 2.グルタミン酸輸送タンパク質の特異的阻害薬(DL-threo-β-benzyloxyaspartic acid, TBOA)を用いて,スピルオーバー仮説を更に詳しく検討した。登上線維刺激に伴う脱抑制は,TBOAにより濃度依存的に増強された。また,興奮性ニューロンから自発的に放出されたグルタミン酸の回収を,高濃度のTBOAを用いて阻害すると,籠細胞のGABA放出は,AMPA受容体および代謝調節型グルタミン酸受容体の活性化を介して顕著に減弱された。以上の結果から,登上線維と籠細胞の間で見られる異種シナプス間相互作用はグルタミン酸回収機構によって常に阻害されているものの,登上線維が高頻度に活動した場合,登上線維の伝達物質は回収機構の能力を超えて拡散することが示唆された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Shin'Ichiro Satake, Fumihito Saitow, Dmitri Rusakov, Shiro Konishi: "AMPA receptor-mediated presynaptic inhibition at cerebellar GABAergic synapses : a characterization of molecular mechanisms."European Journal of Neuroscience. (印刷中). (2004)