2004 Fiscal Year Annual Research Report
前シナプス性AMPA型グルタミン酸受容体の存在とその活性化機構
Project/Area Number |
15700295
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
佐竹 伸一郎 生理学研究所, 生体情報研究系, 助手 (30360340)
|
Keywords | 小脳 / グルタミン酸 / GABA / プルキンエ細胞 / 籠細胞 / バーグマングリア / 電気生理学 / 拡散 |
Research Abstract |
下オリーブ核から小脳への登上線維を反復刺激すると,籠細胞-プルキンエ細胞間のGABA作動性シナプス伝達が短時間抑制されること(即ち,脱抑制)を発見し,この異種シナプス間相互作用はAMPA型グルタミン酸受容体で仲介されるシナプス前抑制の様式で起こることを明らかにしてきた。低親和性-グルタミン酸受容体競合阻害薬やグルタミン酸輸送担体阻害薬を用いた薬理学実験から,反復刺激に伴い登上線維から大量に放出された興奮性伝達物質は,シナプス間隙から拡散し,近傍のAMPA受容体を活性化してシナプス前抑制を引き起こすと推定した。登上線維伝達物質の作用プロセスとして,(1)登上線維-プルキンエ細胞シナプスを密に覆うグリア細胞(Bergmann glia)のAMPA受容体を活性化して,二次的に籠細胞にシナプス前抑制を引き起こした可能性,(2)籠細胞終末のAMPA受容体に作用して,直接,シナプス前抑制を誘発した可能性の2つを想定した。両仮説を検討するため,グリア細胞と籠細胞からそれぞれパッチクランプ記録を行い,各細胞に発現するAMPA受容体の性質を比較した。グリア細胞のAMPA受容体チャネルは,内向き整流性と高いカルシウム透過性を示すと共に,philanthotoxin-433(PhTX:カルシウム透過型AMPA受容体特異的阻害毒)で強く阻害された。一方,籠細胞のAMPAチャネルはカルシウム透過性を示さず,PhTXで阻害されなかった。PhTXがグリア細胞のAMPA受容体を特異的に阻害する性質を利用して,登上線維伝達物質の作用過程を検討した。登上線維刺激に伴う脱抑制は,PhTXで全く影響されなかった。また,PhTXは,AMPAを小脳スライスに灌流投与して誘発したGABAシナプス伝達抑制に対しても無効であった。登上線維の伝達物質は,籠細胞終末のカルシウム非透過型AMPA受容体を活性化して,GABA放出を阻害していると結論した。
|
Research Products
(1 results)