Research Abstract |
ナノ・マイクロマシニング技術を利用し作製した,水力平均直径約5μmのマイクロチャンネル(以下,MC)を流れるヒト赤血球の動的変形能を精度の高い実験によって,定量評価するシステムを構築・評価することを目的とし実験を行った. まず,従来までのドライエッチングによる作製法に対して,作業の簡略化を目指し,感光性ガラスに対して,フォトリソグラフィーとフッ化水素によるウエットエッチングでMCの作製を試みた.その結果,感光性ガラスの特性上,微細なパターンを直接精度良くパターンニングすることが困難であり,本研究が目標としている幅5μmの流路を作製することが困難であった. そこで,シリコン基板を用いて作製したMCをもちい,全血検査用真空採血管で採取したヒト血液を対称とした,赤血球の変形能の評価とその挙動の観察を行った. その結果,本研究で作製したMCを用いることで,市販のMCと比べ,赤血球の時系列変形挙動をより明確に捉えることができた.このMC内でのヒト赤血球の変形挙動としては,非対称変形,面対称変形,軸対称変形の異なった3種類の変形形態を観察することができた.中でも,生体と同条件に相当する血流速度において軸対称変形をした赤血球は,その全体が変形しているのではなく,血球の背面側のみが局所的に変形していることが分かった.また赤血球は,×高さが3μm×3μm以上であれば,破壊することなく通過できることが分かった.また,変形能の測定を行うことで,採血から日数経過に伴い,赤血球の変形能が明らかに低下していくことが分かった.
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