Research Abstract |
我々は動脈硬化初期の重要なKey Eventである,単球の内皮への接着及び内皮下への侵入動態の単一細胞レベルでの生細胞を用いた3次元連続観察を実現する為,共焦点レーザー顕微鏡を用い,下記2点の改良により新しい実験系を構築した.(1)非常に薄いコラーゲンゲル層(厚さ30-50μm)をガラスボトムディッシュ上に作製することにより,倒立顕微鏡下での高倍率直接観察を可能とした.(2)HUVEC(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞)及びヒト末梢血より単離した単球を生きたまま適切に蛍光ラベルすることにより両細胞の活性を最大限に維持することに成功した(Hashimoto et al., Atherosclerosis, 2004).この実験系により,"内皮細胞本体を通る単球の侵入経路の解析"を試みた.一部で内皮細胞本体に陥入して侵入しようとする単球が観察され,電子顕微鏡観察等により一部で報告されている経路が存在する可能性が示唆された.それ以外の大部分の単球は内皮細胞に接着後,細胞間隙の方向に移動(crawling)し,細胞間隙を通って内皮下に侵入した.このような単球の侵入経路の違いは,1)局所の内皮細胞の細胞間隙を含めた力学的・化学的特性の違い,2)個々の単球の機動性・侵入活性,細胞表面分子の発現状態の違いによることが想定され,これらについて詳細に検討することが今後の課題である.また,本実験系を発展させ,動脈硬化誘発の主要因子である酸化LDLを内皮下のコラーゲンゲル層に混入する動脈硬化病態モデルを構築した.蛍光抗体法により酸化LDL分布を観察した結果,酸化LDLは内皮下だけでなく,一部は内皮細胞内にも取り込まれており,実際の病態に近い状態を再現できていることを確認した.現在,本実験系の特性を生かし,酸化LDLが個々の単球動態(侵入活性,移動速度等)に及ぼす影響について詳細な検討を行っている.
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