2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の力学的性質と細胞骨格ネットワークの関係の解明
Project/Area Number |
15700342
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山本 玲子 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体材料研究センター, 主任研究員 (20343882)
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Keywords | 細胞接着 / 細胞骨格 / アクチンフィラメント / ストレスファイバー / 干渉反射顕微鏡 / 焦点接着 / 接着斑 / インテグリン |
Research Abstract |
生体内の器官・組織は常に荷重を受け、変形している。また、生体が受ける力学的刺激は、組織・器官の形状や生理的機能に影響を及ぼす。したがって、生体の生理ならびに機能を理解するためには、生体組織やその構成要素である細胞の力学的性質を明らかにする必要がある。本研究では細胞骨格に着目し、その状態と細胞の力学的性質の関係を明らかにすることを目的とした。 まず初めに、細胞外マトリックスタンパク質でガラス表面を被覆し、その上でマウス線維芽細胞L929を培養し、接着斑・細胞骨格形成量を変化させ、その量と細胞剪断接着力・剥離エネルギーの関係を検討した。その結果、フィブロネクチン被覆表面では接着斑・細胞骨格形成量が増加し、接着力・剥離エネルギーも増加した。一方、ラミニン被覆表面では、接着斑・細胞骨格形成量が減少し、接着力・剥離エネルギーも減少した。ビトロネクチン被覆表面では、接着斑は変化しなかったが、細胞骨格形成量が増加し、接着力・剥離エネルギーも増加した。細胞剥離後のガラス表面を干渉反射顕微鏡で観察したところ、接着斑タンパク質に結合して細胞骨格と思われる繊維状物質が、剥離方向に整列して残されていた。 次に、細胞骨格の方向性と接着力・剥離エネルギーの関係について検討した。ガラス表面に幅約10μm、深さ約5μmのV字型の溝を約10μm間隔で作成した。この溝付ガラス表面でL929を培養し、接着力・剥離エネルギーを測定し、平滑表面の結果と比較した。その結果、細胞の伸展方向によって接着力・剥離エネルギーは異なること、また溝付表面の方が、平滑表面よりも細胞骨格形成量が少なく、それゆえ接着力・剥離エネルギーが小さいことを明らかにした。このことから、今回用いた溝付ガラス表面は、細胞の伸展方向の制御には有効だが、細胞骨格の形成方向の制御にはあまり有効でないことが判明した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 坂本晴美, 山本玲子, 金澤健二, 塙隆夫: "材料-細胞間接着における接着斑・細胞骨格がせん断接着力に及ぼす影響"日本機械学会講演論文集. 03-1(V). 1-2 (2003)
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[Publications] 山本玲子, 神山祐子, 塙隆夫: "剪断力負荷による細胞剥離面の干渉反射顕微鏡観察"日本機械学会講演論文集. 03-1(V). 3-4 (2003)