2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の力学的性質と細胞骨格ネットワークの関係の解明
Project/Area Number |
15700342
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山本 玲子 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体材料研究センター, 主任研究員 (20343882)
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Keywords | 細胞接着 / 細胞骨格 / アクチンフィラメント / ストレスファイバー / 干渉反射顕微鏡 / 焦点接着 / 接着斑 / インテグリン |
Research Abstract |
生体内の器官・組織は常に荷重を受け、変形している。また、生体が受ける力学的刺激は、組織・器官の形状や生理的機能に影響を及ぼす。したがって、生体の生理ならびに機能を理解するためには、生体組織やその構成要素である細胞の力学的性質を明らかにする必要がある。本研究では細胞骨格に着目し、その状態と細胞の力学的性質の関係を明らかにすることを目的とした。 はじめに、力学的刺激が細胞骨格形成量・接着斑占有面積及び細胞接着特性に及ぼす影響を調べた。ガラス表面にフィブロネクチンを被覆し、ヒト正常線維芽細胞HEL299を播種、48h培養後、平行平板流路を用いて剪断流れを3h負荷した。その後、細胞骨格形成状態を観察し、さらに剪断接着力・剥離エネルギーを測定、細胞骨格の発達方向依存性を調べた。その結果、剪断流れ負荷により、細胞骨格形成量は有意に増加した。剪断接着力・剥離エネルギーは剥離方向に対し細胞骨格が垂直に交差する方が、平行に発達している細胞よりも有意に高かった。剪断接着力・剥離エネルギーの細胞骨格発達方向依存性は、無負荷の状態よりも剪断流れ負荷後の方がより明確に現れた。 剪断接着力・剥離エネルギーの細胞骨格発達方向依存性が現れた理由を解析するために、生細胞における細胞骨格の可視化を行い、材料表面からの剪断剥離過程における細胞骨格の変形挙動観察を行った。その結果、細胞骨格発達方向と剥離力負荷方向により、細胞骨格の破断機構が異なることが判明した。細胞骨格発達方向に対し垂直方向に力を加えた場合、細胞骨格は接着斑を起点に大きく変形後、破断した。しかし、細胞骨格発達方向と平行に力を加えた場合、細胞骨格はすぐに破断した。前者の場合、細胞骨格に加えられた力は骨格全体に伝わり、両端の接着斑部で反力が生じたと推測される。後者の場合、チップ接触部より剥離方向後端の接着斑には引張力が加わったが、チップ接触部から剥離方向前端の接着斑には圧縮力が加わったと推測され、そのため剥離方向前端の接着斑には力が伝わらず、結果として剪断接着力・剥離エネルギーが前者よりも小さくなったと考えられる。
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