Research Abstract |
今年度は,複合型発熱素子の励磁周波数f,磁束密度Bに対する特性について検討を行った.複合型発熱素子は励磁周波数及び磁性体に鎖交する磁束密度に依存しており,励磁周波数,磁束密度を上昇させることで温度特性が良好になることがわかる.実験の結果,励磁周波数と磁束密度を掛け合わせたもの(f×B値)が300を超える付近から良好な温度特性が得られる事がわかった. また,卵白中に素子を配置し,卵白が凝固する様子を擬似生体の例として観察を行った.卵白はおよそ58℃から白くなり,80℃で完全に凝固した.発熱素子の周囲に長軸方向で12mm,短軸方向で7mmの範囲に卵白が白く変化する領域が得られた.これは,加温領域の一つの実験的目安と考える事ができる. 続いて,発熱素子の形状変化として,磁性体の断面積をそれぞれ変化させてた場合の温度特性について検討を行った.励磁条件は周波数100kHz,磁束密度8mTとした.また,それぞれの素子を励磁した場合における温度特性とその時の初期温度変化率についても検討を行った.素子体積(断面積)に対する温度特性をみると,温度特性は素子体積が大きいほど高い傾向を示しているものの,その傾向として素子断面積を増加するにつれ飽和傾向を示している.素子体積を変化させた場合に温度特性が変化する要因としては,それぞれの素子において磁性体に集中する磁束量の差異が考えられる.磁束量は磁場の鎖交断面積および体積変化に伴う実効透磁率に比例するものと推定でき,この差異により銅環に誘起される短絡電流に差異が生じているものと考えられる.今回はハイパーサーミア用素子の温度分布特性,励磁特性ならびに種々の大きさの腫瘍を想定した,素子体積を変化させた場合の発熱特性に重点を置いた.その結果,必要な励磁周波数,磁束密度の大きさについてほぼ見当づけることができた.また,素子の形状を変化させた場合に素子体積が増加するにつれ飽和傾向を示すことも分かった.この傾向から,素子体積を小さくした場合においても十分な発熱が得られる大きさがあるといえ,臨床応用可能な腫瘍サイズに適合する高温ハイパーサーミアの完成に向けて,検討を続ける必要がある.
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