Research Abstract |
視覚障害者を対象としたインタビュー調査より,現状の音環境におけるバリアフリー・デザインのうち,彼らにとって役に立たないもの,または,使い勝手の悪いものは,次の6つの典型的なパタンに分類できることが明らかとなった.(1)音が小さすぎる.(2)音が反響しすぎる.(3)近くに似た音が存在している.(4)不適切な放送内容である.(5)不適切な場所やタイミングで音が鳴る.(6)設置された音についての情報提供不足. これらのうち,特に「(1)音が小さすぎる」という問題について,音響式信号機と盲導鈴を事例とし,視覚障害者がこれらに求める音量を音響心理実験によって測定した.その結果,騒音レベルの変動が小さな環境下においては,音響式信号機に求められる音量(L_<Amax>)は環境騒音(L_<Aeq>)より14dB大きい音量であり,盲導鈴に求められる音量は環境騒音より12dB大きい音量であった.さらに,騒音レベルの変動が大きな環境下においては,大型車通過時のように騒音レベルが極大となる状況に対して信号音の音量を設定する被験者と,その環境下の一般的な状況に対して信号音の音量を設定する被験者に分かれた.そして,音響式信号機については前者が,盲導鈴については後者が主流であった.これらの結果より,騒音レベルの変動が大きな環境下においては,音響式信号機に求められる音量は,大型車通過時のような,環境騒音レベルがその環境下で考えられる最大の状態から14dB大きい音量であり,盲導鈴に求められる音量は,その環境下の通常時の騒音レベルから12dB大きい音量であると推定された.これらの結果より,一般に,視覚障害者が音響式信号機に求める音量は,環境騒音レベルがその環境下で考えられる最大の状態から14dB大きい音量であり,盲導鈴に求める音量は,その環境下の通常時の騒音レベルから12dB大きい音量であると結論付ける.
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