2004 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本のファッションにおけるナショリティと身体表現の記号学的研究
Project/Area Number |
15700463
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小野原 教子 兵庫県立大学, 経営学部, 助教授 (30336820)
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Keywords | 衣服 / 身体 / ファッション / ナショナリティ / アイデンティティ / プロレス / 表現 / コスプレ |
Research Abstract |
女子プロレスラーの衣装を眺める「観客」の存在に焦点をあてながら、レスラーが演技者として何を表現しているのか、期待する視線は衣装に反映されているという仮説を立てて考察している。戦後アメリカから輸入される形でストリップティーズの幕間に行われていた女子プロレスは、「男性」「大人」によるエロティックな視線によって「脱がされる」衣装としてスタートしている。家族で楽しむ娯楽としての発展は、「女性」「子供」などの観客をも獲得し、やがてはスポーツとしての明るいイメージが付与されるようになる。70年代や80年代にかけてのタレント性の強い女子レスラーの台頭は、「若い女性」の観客を獲得し、90年代に入ってからの女子プロレスの大きなブームは、格闘技を見る「男性」のまなざしをも勝ち取ることに成功している。衣装はもはや重要な舞台表現として観客に大きな効果をもたらす不可欠の要素となっている。 日本の女子プロレスは、スポーツ、芸能、格闘技、と様々な要素で成立する「女子プロ」という一ジャンルとして独自の発展を遂げた。これまでの「ファン」は、少数化し熱狂的な視線をもった「マニア」・「おたく」と化し、メディアとの関係によってそれはいっそう進行しているようにも思われる。類型化できていた女子プロレスの衣装も、現在はそのレスリングスタイル同様に、複雑化・多様化している。本年度は、他の選手が練習をしている時間に衣装を自作することに励む「広田さくら」という女子レスラーを特にとりあげ、その「コスプレ・プロレス」の分析を行った。その笑いを呼ぶプロレスは、対戦相手の衣装をそっくりそのまま再現したり、プロレスラーにとどまらない話題の芸能人や、クリスマスツリーのような季節の風物詩を表現、人だけではなく物までをもパロディする内容である。「広田さくら」という存在と、衣装を通して自己と他者の関係を把持していく実践としてのプロレス=衣装(ファッション)を論じる試みとなった。
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Research Products
(1 results)