2003 Fiscal Year Annual Research Report
「父親の育児参加奨励論」が父親の育児不安感に及ぼす影響に関する実証的研究
Project/Area Number |
15700465
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Research Institution | Tsu City College |
Principal Investigator |
冬木 春子 三重短期大学, 生活科学科, 助教授 (60321048)
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Keywords | 父親の育児参加 / 父親の不在 / 父親の育児不安感 |
Research Abstract |
本研究では1990年代後半からわが国において高まりつつある父親の「育児参加奨励論」に着目した。まずは、行政あるいは専門家による父親論の内容を検討したところ、「育児参加」についてはジェンダーをめぐり二極化していることが明らかになった。一つは「父権」を否定し、子どもの遊び相手だけでなく母親の領域とされてきた乳幼児の世話などを含め育児全般に父親が関わることを奨励する議論である。もう一つは、「父権」を肯定し生物学的な性差に基づき、母親には果たせないとする「子どものしつけ」「社会のルールを教える」などの育児に父親が関わることを奨励する議論である。このようにジェンダーをめぐって「父親の育児参加論」も二極化するなか、どういう父親が「不在」なのかという議論もジェンダーをめぐって二極化していることが明らかになった。すなわち、ジェンダー中立的な立場からは「物理的父親の不在」が主として問題にされる一方で、ジェンダー固定的な立場からは「権威的父親の不在」が問題にされているのである。 一方で、アメリカにおいても「父親の育児参加奨励論」が盛んであるが、より問題とされているのは低所得層の母子家庭における実質的な「父親の不在」であり、父親が経済的に家族や子どもを支えないために母子家庭が貧困で苦しみ、その母子を援助するための福祉予算が増加していることである。その文脈で「父親の責任」を強調しようとする動きがある。その意味で、日米で問題とされる「父親の不在」が異なるために、それを防ぐための「父親の育児参加奨励論」は異なった内容からなると考えられる。 以上の先行研究の見直しと概念整理をふまえ、本研究では、わが国において「育児参加奨励論」について父親自身がどのように考え、内面化しているのか、また「育児奨励論」の内面化と父親の育児不安感との間に関連性があるのかを実証的に明らかにすることであった。そこで、平成15年度は平成16年度に行う量的調査のための調査票を作成する準備として、三重県在住の乳幼児をもつ父親8名にインタビュー調査を行った。インタビュー調査から父親は「育児参加」することを望んでいるものの、その内容はジェンダー規範によって異なること、父親の育児不安感は「親役割遂行」の不安と「子どもの成長・発達」への不安に分けられることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)