2003 Fiscal Year Annual Research Report
出土木製品のPEG含浸処理に伴って発生する気体に関する研究
Project/Area Number |
15700538
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
米村 祥央 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (50332458)
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Keywords | 出土木製品 / 保存処理 / ポリエチレングリコール(PEG)法 / 低分子化 / 気体生成物 |
Research Abstract |
平成15年度研究報告 今年度はポリエチレングリコール(PEG) 法による出土木製品の保存処理中に、PEGの低分子化反応に伴う気体生成物の発生状態を確認するための基礎実験をおこなった。元興寺文化財研究所の出土木製品用PEG含浸槽(PEG濃度約100%、約65℃)のPEG溶液表面付近の気相からサンプルを採取してガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)で分析した。この分析はガスクロマトグラフ(GC)の導入前に島津製作所にておこなった。GC-MSでは、酢酸、ギ酸と考えられる物質の他にフェノール類と考えられる物質が検出された。特にこのフェノール類は液内に浸漬されている木製品が発生源と考えられる。そのため、PEGのみを閉鎖系60℃で約2週間、80℃で数時間加熱し、新規導入したGCで分析したところ、酢酸、二酸化炭素が検出された。検出器はFIDを用いた。ここで、ギ酸の検出を確認することができなかったが、ギ酸の分析には約10ppm以上の濃度が必要であるため、現状では得られたデータが真のものであるということは難しい。そのため来年度の課題としてはサンプルの濃縮を試みるなど、実験方法に改良が必要である。また、これまでにおこなってきた研究結果によって、PEGは閉鎖系に比較して空気の出入りが可能な系において、より大きな速度で低分子化が進むということが明らかになっている。このような系では発生すると考えられる気体生成物も次々に拡散してしまうため、サンプリングが困難である。来年度はそのような問題点についても取り組んでいく予定である。
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