Research Abstract |
本研究の最終目標は,山地流域全体の地形形成プロセスを把握することを視野におきながら,特に流域最上流部の地形変化速度の速い地域の地形変化を二次元的にとらえ,そのプロセスをモデル化することである.そのためには,精度の良い高解像度数値標高モデル(DEM)が不可欠である.しかし,これまでの地形学の研究成果も考慮してこのような研究を遂行するためには,理論的,技術的に多くの問題をクリアする必要がある.そこで本研究では特に,これらの研究の基礎となるDEMの作成と実用性の検討に重きをおいた研究を行ってきた. この研究ではまず,山梨県の雨畑ダム流域の地形を対象として,デジタル写真測量によるDEMの作成・評価,取得データのキャリブレーション,流域の地形特徴の定量的な検討を行った.これら一連の作業を通して行うことで,生じる問題の解決方法に関する多くのノウハウを蓄積することができた. 次に,勾配やラプラシアンといった微分的な地形計測量から山地地形を評価するにあたり,適切なDEMの解像度を決定する必要があった.この問題に関しては,統計,オルソ画像との比較,そして地形と関連性の深い現象の三つの視点から検討を行い,目的に応じて,どの程度の解像のDEMが適切であるかについて示すことができた(研究成果欄の田中・大森,2005). また,雨畑川流域の解析においても,これまでは用いることが出来なかった高解像度のデータを用いたことによって,斜面形と崩壊発生様式の関係など,地形研究上の新しい知見をいくつか得ることができた.これらの成果は,二報の英語論文として既に投稿済であり,現在査読中である. 最後に,研究代表者(田中)は,これらの成果により,平成十六年十一月,東京大学から博士(理学)の学位を得た.この補助金なしに研究の遂行は難しかった.記して感謝する.
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