2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本におけるHIV/AIDSの空間的拡散モデリング
Project/Area Number |
15700549
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中谷 友樹 立命館大学, 文学部, 助教授 (20298722)
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Keywords | HIV / AIDS / 空間的拡散 / 時空間的流行モデル / 感染症サーベイランス |
Research Abstract |
1.わが国のHIV/AIDS流行の状況を、感染症サーベイランスによるデータに基づき整理した。その拡大の空間的様相は、階層的拡散(都市規模体系に基づいた拡散)および近接的拡散(逐域的な空間的拡散)によって整理できる。すなわち、1990年代初頭には東京およびその周辺に集積していたHIV/AIDSの患者報告は、大阪、福岡等の広域中心都市へと波及し、さらにその周辺地域でも患者数の拡大がみられる。結果として、HIV/AIDSの流行は全国へと及んでいる。HIV/AIDSの患者報告数の推移を、年齢階層別人口、海外渡航者数などの統計資料とともに、都道府県別の時系列データとして整理した。さらに、カルトグラム(人口規模に応じて地区単位を描き分ける地図学的技法)によるアニメーションによって視覚的な整理も実施した。 2.HIV/AIDS流行の空間的モデル化のための文献レビューを実施した。過去の研究の多くは、感受性者S、感染者I、除去者(発病者)R間での推移をモデル化するSIR型の理論疫学モデルであるが、実際の利用にあたっては、1)感受性者および感染者規模の推定、2)空間的な感染規模の推定、3)感染様式別の流行推移の把握に困難がある。欧米での経験的なパラメター推計値を援用する方法論を検討したが、欧米での推計に利用された潜伏期間などの仮定が、日本における過去の知見と必ずしも対応しない問題が認められた。英国でかつて実施されたMicrosimulationによる方法論は、詳細な感染様式別の流行推移の把握に有望だが、感染様式別の潜在的な感受性者の地理的分布など、不確定なパラメターの設定が多くなる問題がある。これに対して、統計的なパラメター推計を一部援用する可能性を、事前にもつ「もっともらしさ」の情報を利用できるベイズ統計学的な方法論を中心に検討した。
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