2003 Fiscal Year Annual Research Report
標高傾度にそった樹木の成長に対する温暖化の影響予測
Project/Area Number |
15710007
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高橋 耕一 信州大学, 理学部, 助教授 (80324226)
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Keywords | ダケカンバ / 肥大成長 / 年輪年代学 / 標高傾度 / 気孔コンダクタンス / 気孔密度 |
Research Abstract |
温暖化が標高傾度にそった樹木の成長に対して,どのように影響を及ぼすかを明らかにするために,年輪年代学的手法,および水分生理学的手法を用いて研究を行った.亜高山帯の代表的樹種であるダケカンバを材料に用いた.今年度おこなった研究は以下の3点である.第一に,山地帯から高山帯に至るまで,草本植物も含めて各植物の分布上限下限を調べるため,乗鞍岳の標高800mから標高3000mまで植生調査を行った.このような詳細な植生調査は乗鞍岳では今までなかったため,今後の研究の貴重な資料となる.第二に,標高2400mにおける分布上限のダケカンバの肥大成長におよぼす気象の影響を解明した.その結果,分布上限では夏季の日射量不足が成長を阻害していることを解明した.森林限界付近では夏季に霧や雨が多い気象環境のためと考えられる.標高1600mの分布下限のダケカンバの肥大成長は,むしろ降水量不足による乾燥ストレスが肥大成長の阻害要因となっていため同一種でも分布上限と下限では明らかに異なる気象条件が成長に影響していることを解明した.そして第三に,分布上限と下限のダケカンバの気孔密度,および気孔コンダクタンスを測定した.その結果,標高傾度にそって気孔密度はほとんど変化することはなかったが,気孔コンダクタンスは明らかに分布下限のほうが低かった.このことから,分布下限のダケカンバでは水分ストレスが強いことが示唆された. 以上の結果は,今後,論文として発表する予定である.一番目の植生調査は現在,投稿準備中であり,二番目の分布上限におけるダケカンバの肥大に成長に関する研究は,現在投稿中である.また,三番目の気孔コンダクタンスに関する研究は今後,水分ポテンシャルなども測定した後に投稿する予定である.
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