2003 Fiscal Year Annual Research Report
微量金属元素同位体を用いた河川および沿岸海洋の環境動態解析の試み
Project/Area Number |
15710009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
淺原 良浩 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助手 (10281065)
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Keywords | 元素分布 / ストロンチウム / 同位体 / トレーサ / 河川 / 堆積物 / 地質 / 愛知県 |
Research Abstract |
地表における元素分布を規定する主要因は基盤岩の地質であるが、第2の要因として物質移動が考えられる。地表の物質移動を捉えることは、人為汚染の拡散などの地表の環境評価において極めて重要である。現代においては,森林伐採による表土の流出、丘陵地開発による侵食の加速,人間活動による物質放出など,地表の元素分布に変化を与える新たな要素もある。これらの地表での物質移動を捉えるにはその起源情報を与えてくれる同位体は有力な指標と考えられる。初年度は、微量金属元素のストロンチウム(Sr)の同位体に着目し、地表物質の分布の規定要因を明らかにした。試料は,愛知県北東部(約2000km^2)の伊勢湾に流れ込む河川の堆積物で,地域,地質を考慮し、142地点で採取した。また、基盤岩との対比のため,基盤岩岩石15試料も採取した。 Sr同位体比の分布の特徴は次のようにまとめられる。調査地域西部と南東部の堆積岩・変成岩地域ではSr同位体比は0.712-0.727と高く、調査地域中央部の花崗岩地域では苗木花崗岩地域の高い値(0.714-0.733)を除けば、0.709-0.713と低い。これらの値は、基盤岩のSr同位体比と一致しており、地表物質のSr同位体比の分布は基盤岩の分布に強く規制されている。しかしながら,Sr同位体比の分布が地質図上の基盤岩の分布と合わない地域も存在する。その1つの理由は、地質図上に表れていない苗木花崗岩が他の基盤岩に小規模に多数貫入していることが挙げられる。2つ目の理由は、河川による地表物質の移動・拡散がある。例えば、調査地域の南東部において、変成岩起源の砕屑物が下流側の花崗岩地域へ移動・拡散している様子がSr同位体比の分布図からわかる。これらの結果は、物質の移動・拡散などの地表の環境評価におけるトレーサとしてのSr同位体の有用性を示唆する例として注目される。
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[Publications] Asahara, Y. et al.: "New Attempt to Geochemical Mapping of Sr Isotope in Aichi Prefecture, Central Part of Japan"Geochimica et Cosmochimica Acta. 67/S1. A25 (2003)
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[Publications] Yoshioka, H. et al.: "Systematic variations in C, O, and Sr isotopes and elemental concentrations in Neoproterozoic carbonates in Namibia : implications for a glacial to interglacial transition"Precambrian Research. 124. 69-85 (2003)