2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染物質による甲状腺ホルモン撹乱作用メカニズムの解明とバイオアッセイ系の開発
Project/Area Number |
15710029
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
堺 温哉 横浜市立大学, 医学部, 助手 (20303555)
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Keywords | 内分泌撹乱化学物質 / 甲状腺ホルモン / 甲状腺ホルモンレセプター / 臭素化難燃剤 / 有機ハロゲン化合物 |
Research Abstract |
申請者はこれまでに、ヒト由来のHeLa細胞において甲状腺ホルモンレセプター(TR)遺伝子、およびレポーター遺伝子(luciferase)が発現する細胞株を樹立している。この細胞は甲状腺ホルモンの暴露に濃度依存的にルシフェラーゼ活性を示す。本年度は、この細胞株を用いて農薬・殺菌剤(31種類)、難燃剤およびその関連物質(11種類)、工業的に用いられている有機ハロゲン化合物(11種類)、合計53物質について甲状腺ホルモン撹乱作用を検討した。 アッセイを行った53物質の内、5物質についてT3の作用をかく乱する可能性が認められた。T3依存的なルシフェラーゼ活性の増加をさらに強めた化学物質は、農薬(除草剤)のNitrofen (NIP)、難燃剤のHexabromocyclododecane (HBCD)、光伝導体として使用されている4,4'-diiodobiphenyl (DIB)(図3)の合計三種類である。NIP、HBCDそしてDIBはT3共添加において、T3依存的なルシフェラーゼ活性を濃度依存的に増加させるだけでなく、T3無添加においてもそれぞれ単独で濃度依存的にルシフェラーゼ活性を増加させた。T3依存的なルシフェラーゼ活性を抑制させた化学物質は、難燃剤のTetrabromobisphenol A (TBBPA)と、難燃剤関連物質の2,4-dibromophenol(DBP)の合計二種類である。TRを介する甲状腺ホルモンの撹乱作用に関しては、これまでにTBBPAの報告はある。しかし、NIP、HBCD、DIB、DBPがTRを介して甲状腺ホルモン撹乱作用を示すことを明らかにしたのは、本研究が最初の報告である。 現在、いくつかの候補遺伝子に的を絞って、これらの汚染物質がT3のシグナル伝達をどのようにかく乱するのか調査している。
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