2003 Fiscal Year Annual Research Report
フタル酸エステルの内分泌撹乱機構と脳下垂体発現蛋白変動のプロテオーム解析
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15710042
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
廣澤 成美 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (40327060)
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Keywords | endocrine disrupter / phthalate esters / ptoteome analysis / valosin containing peptide / UMP-CMP kinase |
Research Abstract |
可塑剤DEHP、DBPは、生活環境中に最も多量に存在し、その内分泌撹乱作に関して議論されている。本実験において両可塑剤をラットに7ヶ月間経口投与し、その性周期を観察したが、コントロール群と比較し、連続的に発情間期と判定される期間の有意な増加が認められた。また、投与群の有意な血中エストロゲン濃度低下も明らかとなった。解剖後の各臓器重量に関し、コントロール群とDEHP投与群の間に有意差は認められなかったが、DBP投与群の脳下垂体、副腎重量は他群よりも有意に増加し、これらの化学物質の内分泌腺への影響が示唆された。内分泌系の上位を司る脳下垂体より可溶性蛋白質を抽出し、投与群-コントロール群間での発現蛋白ディファレンシャル解析を行った結果、DEHP群に特異的に減少する蛋白スポットが多く確認された為この群のプロテオーム解析を遂行し、蛋白量が減少するスポット16種、変化の無いスポット80種の蛋白同定を終了した。減少の著しい蛋白、transitional endoplasmic reticulum ATPase (VCP/p97)、UMP-CMP kinaseは、下垂体前葉からのLHの放出低下に直接関与するものと推測されたVCP/p97は、輸送小胞体-ゴルジ体膜融合と膜再構築に関与し、分泌蛋白の輸送に関して重要な役割を果たしていると考えられ、ホルモン分泌(LH, FSH)を含む小胞体輸送経路において小胞体-ゴルジ体膜融合が不完全となり小胞体輸送能が阻害され、LH、FSH分泌低下に繋がると思われた。LHサージのためにプールされるべきホルモン量が低下すれば卵巣からの血中エストロゲン分泌量の減少により性周期性が不安定になると推測される。更に、UMP-CMP kinaseの減少によるmRNA合成能低下も必要なLH、FSH量を減少させ得る。またやや減少する蛋白群actin beta、calcium binding protein NEFA、acidic ribosomal protein P0も小胞体輸送を阻害の阻害を助長し、同様に78 kDa glucose-regulated protein precursor (GRP 78)、protein disulfide-isomerase、の減少は細胞内小胞体の量的低下を裏づけるものと思われた。一方、 DBP投与群に関しては異なった蛋白量変化が観察され、DEHPとは異なった作用機序を有する可能性があり更に検討中である。
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