Research Abstract |
本研究では,ディーゼル排気粒子(DEP)が喘息様病態と抗原提示細胞に及ぼす影響について検討した.雄のWistarラットは,3mg/m^3ディーゼル排気(DE)に1ヶ月間曝露した.その間1週間おきに計4回,抗原を吸入させ,喘息様病態の指標として肺抵抗を測定した.曝露後,肺胞洗浄液中の細胞と縦隔リンパ節細胞の数や機能について解析した.一方,正常ラットから採取した肺胞マクロファージと末梢血単球は,DEPに24時間曝露し,抗原提示に関わる細胞表面分子(Ia,B7.1,B7.2)の発現と機能を解析した.DEPは,全粒子とジクロロメタン抽出物,残渣粒子を用いて活性を比較した.更に,DEPの影響と酸化ストレスの関連性についても検討した. 肺抵抗はDE曝露により増加し,抗原併用群において最も高い値を示した.肺胞洗浄液および縦隔リンパ節の細胞数も増加したが,抗原提示に関わる分子の増強は認められなかった.しかし,縦隔リンパ節細胞の増殖能はDEにより増加し,抗原併用群で増強されたことから,抗原提示機能を持った細胞が局所のリンパ節に移行した可能性も考えられる.一方,DEPは肺胞マクロファージではなく,単球のIaとB7分子の発現を増加させた.その活性は,残渣粒子よりも抽出物で高く,単球の抗原提示機能も増加させた.抗酸化系酵素であるheme oxygenase-1の誘導能も,抽出物に強い活性がみられた.更に,DEPによる単球のIa分子の増加は,還元剤の添加により抑制された. 以上の結果から,DEはアレルギー性の喘息様病態を悪化させること,DEPは未熟な細胞である単球に作用して抗原提示機能を増加させること,その活性はDEP中の有機成分により細胞に生じる酸化ストレスが主な要因である可能性が示唆された.DEPによるアレルギー反応増悪の過程には,抗原提示細胞の活性化が寄与している可能性がある.
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