Research Abstract |
和歌山県紀南地方では,全国一の梅産地である。梅果実は,梅干へと加工され,さらに調味液に浸漬処理される。調味梅干の生産・出荷高が増加しているが,工場からの梅酢・調味液廃液も増加している。しかし,活性汚泥法による廃液処理の能力は限界に近くなっている。本研究では,現在の処理システムの改善,廃液中に含まれる有用資源の回収・再利用を目的としている。 初めに,電気透析試験機を用いて食塩純成分系における電気透析実験を行った結果,塩濃度は時間経過と共に指数関数的に減少した。調味廃液中の有機酸はクエン酸が大部分を占めるので,クエン酸純成分系における電気透析実験を行った。クエン酸濃度は時間経過と共に指数関数的に減少した。(食塩+クエン酸)2成分系における電気透析実験の結果,食塩濃度が時間経過と共に指数関数的に減少したが,脱塩率が60%程度になるまで,クエン酸の濃度低下は始まらなかった。食塩とクエン酸の相互分離が可能なことを示唆している。 昨年度の一連の研究により,いずれの有機酸も初濃度に依存せず上に凸な吸着平衡関係を示し,ラングミュア式で良好に相関できることが分かっている。本年度,さらに詳細に低濃度領域の吸着平衡関係を実測した結果,実測値はラングミュア式による計算線と一致しなかった。そこで,各有機酸の複数個の未解離カルボキシル基と,それと同数の固定アミノ基との酸・塩基中和反応による化学吸着を仮定し,質量作用の法則,固定官能基の収支などを考慮した結果、吸着平衡関係の理論式を改めて導出できた。理論式のパラメータを実測値から決定し,計算線と実測値を比較した結果,両者はほぼ良好に一致した。 本研究により,電気透析法による脱塩プロセスと,架橋キトサン繊維を用いた吸着プロセスを組み合わせることで,梅干調味廃液を処理し,食塩と有機酸を回収するプロセスを構築できる可能性のあることが示唆された。
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