2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境低負荷型構造材料における新奇な相変態を利用したナノ組織デザイン
Project/Area Number |
15710092
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
波多 聰 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 助手 (60264107)
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Keywords | TiAl合金 / 長周期規則構造 / 透過電子顕微鏡 / 集束イオンビーム法 / マイクロサンプリング法 / 相変態 / 組織制御 / ナノ構造解析 |
Research Abstract |
次世代の環境低負荷型構造材料として注目されているL1_0型γ-TiAl合金のナノ組織制御をめざした基礎研究として,TiAl組成傾斜単結晶の作製を試み,L1_0母相中に形成される長周期規則相の結晶組織の組成依存性を透過電子顕微鏡(TEM)により解析した.得られた研究成果を以下に示す. (1)Ti-54.7at%Al単結晶を1234℃で5分間Al浴に浸すという簡便な方法により,単結晶表面部に幅約6μmの組成傾斜領域を形成させることに成功した.組成傾斜領域は54.7から75at%まで連続的にAl濃度が変化しており,組成傾斜領域と凝固Al領域の間にはAl_3Ti相の結晶粒が形成されていた. (2)集束イオンビーム・マイクロサンプリング法により,組成傾斜領域の薄膜試料を作製することに成功した. (3)作製した試料についてTEMによる微細構造解析を行った.ビーム径約1nmの電子線を用いたX線組成分析により,組成傾斜領域はnmスケールでほぼ連続的にAl濃度が変化していることがわかった.組成傾斜領域ではL1_0母相中に長周期規則構造が形成されており,Al濃度増加に伴い,短範囲規則構造→h-Al_2Ti構造→1次元逆位相ドメイン構造(1d-Aps)→Al_3Ti構造と結晶構造が変化していた. (4)1d-APSはAl_3Tiと同様にL1_2構造を基本とする1次元長周期規則構造であるが,両相の間には結晶粒界が存在し,結晶方位関係は認められなかった.しかも,1d-APSはL1_0母相側と結晶方位関係を有して形成するという興味深い事実が明らかとなった. (5)L1_0母相中に形成する斜方晶h-Al_2Tiは2種類の方位バリアントをもつが,組成傾斜試料ではそのうちの一方のみが優先成長したり,他方と異なる微細組織を形成したりすることがわかった.これは組成傾斜材特有の組織形成として注目すべき結果である.
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