2004 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロマシンによる、歪、フォノンを介した量子ドット制御の研究
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15710102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中岡 俊裕 東京大学, 先端科学技術研究センター, 科学技術振興特任教員 (20345143)
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Keywords | 量子ドット / マイクロマシン / 歪 |
Research Abstract |
半導体量子ドットは究極の零次元構造であり、離散的電子準位をもつ。このため、連続的電子状態をもつバルク状態とは異なる魅力的な特性をもち、レーザーなど多方面への応用が期待されている。とくに、近年、量子計算へ向けた試みは、実現された時の産業界へのインパクトも大きく、注目を集めている。量子演算の条件としては、演算過程でのコヒーレンス性の維持が重要であり、固体素子としてはきわめて長いデコヒーレンス時間をもつ量子ドットが有望視されている。このような量子ドットの新たな制御手法を提案、実証した。 本研究では、マイクロマシン構造による量子ドットの歪制御を研究し、量子ドットに意図的に歪を印加し、偏光、発光エネルギーを変化させることに成功した。マイクロマシンを用いた量子ドット量子準位制御の初めての報告である。まず、有限要素法を用いた数値計算により、この素子に誘起される歪量、量子ドットの電子準位の変化を計算し、最適な構造を設計する手法を確立した。つぎに、MOCVD法により、サンプルを作製した。GaAs層の上部に、犠牲層、歪層、ドット層と成長する。犠牲層を選択エッチングにより、除去すると、歪層の緩和により、たわんだ構造が得られる。この構造の上部、下部のGaAs層にはそれぞれ、p、nにドープしてあり、このp+,n+-GaAs間に逆バイアスをかけることで、コンデンサーとして駆動する。このような素子における印加電圧と歪量、電子準位の変化量との対応を単一ドット分光により測定し、計算結果と比較し、このようなマイクロマシンエアブリッジ構造の作製、評価手法を確立した。 本研究で、提案、実証した量子ドットの準位制御法は、今後様々な応用、展開が期待される。例えば、この量子ドットを有するエアブリッジ素子によるナノメカニカル共振モードのレーザー冷却がアメリカ、スイス、オーストリアのグループにより、理論的に提案されている(I.Wilson-Rae, P.Zoller, and A.Imamoglu, Phys.Rev.Lett.92,075507(2004))。他に、申請者もスピンを用いた章子デバイスの指標となるg因子の歪印加による変化を理論的、実験的に示している。このように、本研究により得られた素子は量子状態制御を実現する素子として今後さまざまな応用が期待されている。
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Research Products
(6 results)