Research Abstract |
本研究の目的は,入力に強い相関性を有する待ち行列モデル,また,さらに一般的な確率ネットワークに対して,定常性を仮定しない解析,あるいは動的なふるまいの解析を行ない,インターネット等に見られる様々な新しい特性の評価に応用することです.この目的の遂行のため,また関連する課題として,今年度に行なった研究は以下の通りです. まず昨年度からの続きとして,待ち行列モデルの到着過程が任意の相関を許す点過程として与えられ,サービス分布に裾の重い分布が与えられたときに,入力の確率強度過程と点過程マルチンゲールを用いた動的解析を行い,漸近特性を評価した結果が海外の学術論文誌に掲載されました.この研究成果により,日本オペレーションズ・リサーチ学会から文献賞を頂きました. 昨年度から,ある一般的な空間点過程入力をもつ確率モデルに対して,入力に現れる相関の程度をある種の確率順序と呼ばれる概念を用いて表し,相関の程度に関する単調性や上下界を調べていたのですが,この研究に対して不備が見つかったので修正しました.また,この成果は海外の学術論文誌に掲載されました.ここで考えている空間点過程モデルは,センサーネットワークやアドホックネットワーク等への応用に繋がると考えられるものです. 応用の面では,インターネットにおける通信品質を測定するための新しい手法について,得られた結果を海外の学術論文誌に投稿しました.ここでは,確率論における測度変換,サンプルパス解析,点過程および流体近似等の概念を用いており,通信トラヒック過程の定常性は仮定していません.提案した手法は,測定のためにネットワークに送り込む試験パケットによる負荷を極力抑えながら,複数の利用者が受けるサービス品質を同時にかつ個別に測定できるというものです. また,インターネットにおけるWebキャッシュ等で一般的に用いられているLRU(Least-Recently-Used)キャッシュの解析を行ないました.ここでは,Webページへのアクセスの頻度を表す確率分布にZipfの法則と呼ばれる裾野の重い分布の形が見られることから,このZipfの法則を仮定し,ページアクセス過程には強い相関を許して,キャッシュの効率の良さの指標であるページフォールト率の漸近解析を行ないました.この成果も海外の学術論文誌に投稿中です.
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