2003 Fiscal Year Annual Research Report
プロラクチンによる生殖細胞アポトーシス誘導の分子機構の解明
Project/Area Number |
15710163
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
江頭 恒 熊本大学, 理学部, 助手 (40359964)
|
Keywords | アポトーシス / 精子形成 / プロラクチン / プロラクチン受容体 / 遺伝子発現変化 / アイソフォーム(isoform) / プロテアーゼ / シグナル伝達系 |
Research Abstract |
本研究は精子形成過程でのプロラクチン(PRL)による生殖細胞アポトーシス誘導の分子機構を解明することが目的である。実験材料に用いているイモリの精原細胞は、7回の体細胞分裂後に精母細胞へと分化して減数分裂に入るが、PRLの働きにより6回の分裂を終えた第7世代でアポトーシスを起こす。そこで、この原因をPRLのシグナル伝達系とPRLによる遺伝子発現の変化に着目して探ることにした。 (1)PRLは標的細胞上の受容体に作用し、その細胞内ドメインにあるチロシン残基のリン酸化を介して生理機能を発揮する。哺乳類PRL受容体は選択的スプライシングによりアイソフォームが生じ、細胞内ドメインのアミノ酸配列と長さの違いから長型、短型に大別される。本年度最大の研究成果は、哺乳類以外の生物種では初めてイモリPRL受容体にアイソフォームの存在を明らかにしたことである。哺乳類の分類に従うと、既に単離していたイモリPRL受容体が長型、今回新たに単離したものが短型になる。興味深いことに、短型は細胞内ドメインにチロシン残基を全く持っておらず、PRLとは拮抗的に働く濾泡刺激ホルモンを投与したイモリの精巣だけから単離できた。イモリPRL受容体のmRNAは、長型が生殖細胞だけに対して、短型が生殖細胞、体細胞の両方に発現していたが、いずれも分化ステージ間での差異は見られなかった。これらの結果から、PRLは受容体の長型に作用して第7世代精原細胞にアポトーシスを直接誘導するが、チロシン残基を持たない短型がチロシン残基を持つ長型のシグナル伝達系を制御してアポトーシス誘導、精子形成を調節していることが考えられた。(2)イモリ精巣から調製した5521個のcDNAクローンの中から、PRLが発現を著しく亢進させたクローンとして生殖細胞で発現する転写因子、RNA結合タンパク質をマイクロアレイ法により単離した。これらのアポトーシス過程での働きを現在解析しているところである。(3)PRL投与したイモリの精巣から調製した細胞質画分にチロシン残基がリン酸化されたタンパク質を見出した。これはPRL受容体より下流のシグナル伝達因子としてPRLによるアポトーシス誘導への関与が考えられ、今後アミノ酸配列分析、あるいは質量分析により同定する。
|