2004 Fiscal Year Annual Research Report
旧ソ連の民族粉争と政治発展:ナゴルノ・カラバフ粉争とアゼルバイジャン政治を事例に
Project/Area Number |
15710186
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
廣瀬 陽子 慶應義塾大学, 総合政策学部, 専任講師 (30348841)
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Keywords | ナゴルノカラバフ / 平和構築 / 紛争解決 / 比較政治 / 地域紛争 / ジェノサイド(民族浄化) / 民主化 / 政治発展 |
Research Abstract |
今年度は、民族紛争が及ぼす政治的影響に主眼を置いて研究を進めた。具体的には、紛争がナショナリズムを鼓舞し国家建設に貢献する、また、民主化途中の国ほど戦争を起こしやすい、という政治学の理論をアゼルバイジャンの事例でも立証し、独立後のアゼルバイジャンの政治プロセスを権威主義の成立と変容から分析した。特に成立した後のアゼルバイジャンの権威主義を(1)戦時権威主義、(2)大統領君主制、と名づけ、独自の視点で分類、性格付けし、その意義を検討したことは大きな評価を受けた。なお、その研究成果は、「アゼルバイジャンの権威主義の成立と変容」に発表している。 また、ナゴルノ・カラバフ紛争をはじめとした旧ソ連の紛争の性格付けをあらゆる方面から検討しなおす作業も進めている。旧ソ連全体の紛争をフォローしていることから、今年度、チェチェンのテロが相次いだ際に、さまざまなマスコミから取材を受けた。 特に、最近の研究で流行となっている「ジェノサイド(民族浄化)」という切り口からの分析を行い、6月のシンポジウムと3月の日本学術振興会の国際会議で報告した。さらに、他地域の紛争との比較検討も行い始めており、今年度はイランや旧ユーゴスラヴィアにも出張し(これらの調査資金は別の助成金より捻出)、他地域の紛争調査によって、より深みのある比較検討ができるようになりつつある。 このように本研究は、政治発展の部分についてはかなりの成果を残した。他方、民族紛争一般の研究については、進んではいるものの、次々と課題が出てくる状態であり、このまま引き続き調査を継続したいと考えている。なお、旧ソ連の紛争一般については、2005年度に単行本と新書を出版する予定であり、現在、その準備を進めている。 最後に、研究助成をしていただいていることに心から感謝し、お礼申し上げるとともに、来年度以降もより大きな成果を出せるよう努力する所存であります。
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