2003 Fiscal Year Annual Research Report
地域主義・文化政策・芸術創造:フランダースとケベックの現代舞台芸術に見る相関関係
Project/Area Number |
15710187
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤井 慎太郎 早稲田大学, 文学部, 講師 (10350365)
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Keywords | 演劇 / 舞台芸術 / 文化政策 / フラーンデレン / ケベック / フランス |
Research Abstract |
まず、2003年5月、国際演劇祭の際にモントリオール市に1週間滞在し、ケベックで制作された現実の舞台作品を受容・分析するとともに、文化政策に関する資料の収集と専門家への聞き取りをおこなった(なお、この費用は科学研究費にはよっていない)。また同年7月より1か月半にわたって、ヨーロッパ(フランスとベルギー)に滞在し、フラーンデレン(フランダース)地方およびフランスの舞台芸術実践の美学的革新性、およびそれを律する文化政策についての比較調査研究を行った。とりわけフラーンデレン地方に関しては、現地でしか入手することができない資料(オランダ語のものを含む)を多数手に入れることができたことは大きな収穫であった。また、2003年夏はフランスにおいて、舞台芸術における労働条件(特に休業補償に関して)の変化に伴う、アンテルミタン達の抗議運動が繰り広げられたのだが、これは、フランスのみならず他国においても、グローバル化する経済の中におかれた芸術家の社会的地位とその困難について、期せずして深く再考する機会となった。 現在、第二次世界大戦以降の社会構造と文化制度の変容に関する外国語文献を読解・分析するとともに、この時期にケベックおよびフラーンデレンにおける文化政策が経験する"nationalisation"(「国民」化)の過程において、隣接言語・文化圏との力関係の変容(自己の文化アイデンティティの積極的肯定)が文化政策・実践に与えた影響、さらに、文化政策・実践がそのような状況下においても、いかに排他的ナシヨナリズムに陥ることを避けつつ、創造性の源泉としての他者性・多様性を担保することが可能になったのか、比較検討する論考を現在準備しているところである。
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