2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15720002
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高橋 克也 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (50251377)
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Keywords | 直観主義 / 数学基礎論 / 科学哲学 / カント主義 / ブラウワー / 認識論 / 論理実証主義 / 理性 |
Research Abstract |
平成15年度には、直観主義に関するブラウワーの一次文献の翻訳と消化、20世紀初頭の科学哲学におけるカント主義の位置についての歴史的研究、そして、数学基礎論や解析学をめぐって数学史家との対話を行った。以下、各々の点について具体的に述べる。 直観主義の一次文献の消化は、まだ作業途中であるが、その過程ですでに見えてきたことは、この思想が数学基礎論において一つの技術的な選択肢をなしていたのではなく、独自の認識論を提示する性質のものだったという点である。それは、数学的対象をイデア的なものとも単なる記号とも異なったもの、人間の行為についてのある種の真理と見る思想であり、フランス系の直観主義の言葉を借りれば、精神が世界を征服していく力を予め素描したものとして数学を見る見方である。 20世紀初頭におけるカント主義の評価というテーマは、前述のような認識論、つまり精神や理性の自己認識をもくろむ認識論が、20世紀の半ば以降廃れてしまった理由を探るという意味で、必要であった。本年度は、論理実証主義者におけるカント主義と非カント主義の混在に焦点を当てて研究を進め、パリ第4大学アンジェル教授の私的セミナーにてその一端を報告し、別の一端を埼玉大学紀要に報告した。 数学史家との対話では、19世紀以後の解析学や数学基礎論が「無矛盾性」の追求をもっぱらとしていたのに対して、解析、あるいは一般的に数学的対象の「意味」を考える認識論的な作業がそれとは別に成り立ち得るということを確認することができた。
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