2003 Fiscal Year Annual Research Report
フロイトの「死の欲動」概念を受容し発展させるための思想的枠組をつくる試み
Project/Area Number |
15720016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立木 康介 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (70314250)
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Keywords | 死の欲動 / 快原理 / (リビドー)経済論 / メタサイコロジー / 攻撃性 / サドーマゾヒズム / 超自我 / (反)倫理 |
Research Abstract |
本研究の主要な目的は、フロイトの「死の欲動」概念の思想的意義を明確化し、その今日的な射程を見きわめることであり、その具体的な取り組みとして今年度当初に計画されたのは、1)データ・ベース「フロイトの死の欲動論」の作成と分析、2)フロイトの「死の欲動」と直接・間接の影響関係にある哲学的概念を、フロイト以前、フロイトの同時代、フロイト以後の三つの観点から探求すること、および、3)人間の倫理性が死の欲動に由来するというフロイトのテーゼを支えている論理を洗い出し、その射程を見きわめること、という三つのアプローチである。このうち1)については、ほぼ完全なデータ・ベースが構築され、必要な情報がフロイトのテクストから自由に取り出せるようになった。これにより、1920年に「死の欲動」概念を醸成させるに至る複数の論理が、フロイトの思想の内部で初期の段階からどのように胎動していたかを辿ることができた。2)については、とくにフロイト以後の精神分析における「死の欲動」概念の受容について調査が進められた。フロイト理論を戦後もっとも広範に、かつ多角的に吸収・展開することができたのはフランスであるが、昨年9月のパリ滞在において多くの資料に目を通した結果、フランスにおける今日の「死の欲動」理解のベースになっているのが1973年のJ.ラプランシュ著『精神分析における生と死』であることが判明した。この著作においては、フロイトの「死の欲動」概念に内在する経済論的アポリアが明確に指摘されており、その指摘がそれ以後の精神分析内外における同概念の理論的受容に多くの影響を与えていることが明らかになった。3)については、その基礎的な調査は完了し、そこから得られたデータを現代的な文脈と照合させる作業が現在進行中である。以上の研究の成果は、本年1月に東京で開かれた「精神病理コロック2003-2004」において発表され、多くの反響を得た。
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Research Products
(1 results)