2003 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前衛音楽における美的認識地平の拡大と身体イメージの変容―A.ヴェーベルンとM.フェルドマンを中心に
Project/Area Number |
15720019
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
澁谷 政子 東京芸術大学, 音楽学部, 助手 (90262253)
|
Keywords | 前衛音楽 / アントン・ヴェーベルン / モートン・フェルドマン / 美的認識論 |
Research Abstract |
1、ヴェーベルンとフェルドマンの創作活動と作品の受容に関する調査・研究:研究書および学術論文(日・英・独)を中心に、彼らの音楽に対する評価の検討をおこなうとともに、書簡集から創作を支えている作曲者自身の概念世界を探った。ヴェーベルンについては、音列構造の緻密さ、完璧な構成、新音楽の開拓者といった従来の概念に加え、近年は、自然、神秘主義、幼年時代の思い出、家族とのきずな、といった、異なるイメージにより、新しいヴェーベルン像が提出されつつあるが、このことはヴェーベルン自身の概念にも沿うことが確認できた。また、平成15年12月7日から21日まで、スイスのパウル・ザッハー財団資料室において、ヴェーベルンの自筆譜、書簡、蔵書および、フェルドマンの書簡についての調査をおこなった。この調査により、ヴェーベルンの作曲プロセスにおいて、構造と同時にテクスチュアがきわめて重要な位置を占めていること、また、己の自然への強い帰属意識と創作とが深く結びついていることを、資料から跡付けることができた。また、フェルドマンと美術家たちとの密接な交流の一部を確認することができた。 2、前衛芸術論および身体論の検討:20世紀初頭の前衛芸術家たちの古典的マニフェストの再検討をおこなった。その結果、前衛芸術は確実に新しい技法の問題とかかわるものであるが、それは常に、自己と世界との新しい関係を模索する欲求により根拠づけられているという見解を得るに至った。 3、研究成果の中間発表:前衛音楽作品、作曲家の人格化、聴取者の意味構成という3つの要因をめぐる入り組んだ関係についての理論的考察にもとづき、この3者の古典的関係の変容の例をヴェーベルンに指摘する論文を、東京藝術大学音楽学部紀要に発表した。 なお、研究代表者は平成16年4月より福井大学教育地域科学部に異動し、研究を継続する。
|
Research Products
(1 results)