2004 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀日本における書籍流通の販路の解明と小売業の拡大についての研究
Project/Area Number |
15720039
|
Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
木越 俊介 山口県立大学, 国際文化学部, 講師 (80360056)
|
Keywords | 江戸時代 / 小説 / 出版 / 流通 / 名主改 / 中本型読本 / 為永春水 |
Research Abstract |
本年度は一年目に引き続いての研究対象和書の調査に加え、精力的に研究発表も行った。 調査では、慶応大学図書館や京都大学図書館へ赴き、データの厚みを増すことができた。それと平行して、データ解析にも時間と労力を費やした結果、一つの結論を得ることができた。すなわち、江戸時代の文化年間(1804〜1818)において「中本型」と呼ばれる書型の小説本が一時的に衰退するのだが、それがこの時期の「名主改(なぬしあらため)」という出版に至るまでの手続きや担当部署の変質などと密接に対応していることをつきとめた。また、この変化は小説本の中の諸ジャンルの動きとも関わっていることが明らかになってきた。こうした点を中心に、平成16年度近世文学会秋季大会(於同志社大学、十一月二十日)において口頭発表「書物と地本の間-文化期における中本型読本の消滅について-」を行った。本発表は中間報告的な内容であるが、学会で受けた指摘や来年度の調査を踏まえて、最終的には本研究の最大の成果としての論文として結実する見込みである。 さらに、調査の進展が順調であったことから、予定よりも幅広い時代・分野の作品をも研究することができた。具体的には、平成17年1月発行『国文学解釈と鑑賞』別冊(「江戸文化とサブカルチャー」)に「為永工房発・読本の作り方」として論文発表を行った。本稿は、文化期に続く文政年間(1818〜1830)における、為永春水の読本作品に認められる原拠を指摘し、その制作方法を分析したものである。ただ同時に、文政期の小説やそれをとりまく環境については、さらに膨大な調査・研究が必要なことも痛感したので、これは次なる研究課題として継続していきたい。 全体として本年度は予定通り充実した調査・研究を行うことができ、来年度は複数の論文として発表できる準備も整った。
|
Research Products
(1 results)