2003 Fiscal Year Annual Research Report
『光源氏物語抄(異本紫明抄)』を中心とする中世の源氏物語古注釈の研究
Project/Area Number |
15720041
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
陣野 英則 早稲田大学, 文学部, 講師 (40339627)
|
Keywords | 源氏物語 / 古注釈 / 光源氏物語抄 / 紫明抄 / 素寂 / 長珊聞書 / 三条西公条 |
Research Abstract |
2003年度には、中世前期の古注釈書において、『源氏物語』本文の区分に関する注記がどの程度見出されるか、ということを網羅的に調査・検討した。そうした注記は、基本的にほとんど見出されないのであるが、今回の調査・検討によって、『光源氏物語抄(異本紫明抄)』の中に引用されている素寂説が、同時代の注釈に比べると、本文の区分に関してかなり先駆的であること等がわかった。このことについては、既に論文にまとめてあり、近く刊行する予定の著書『源氏物語の話声と表現世界』に、これを補正した上で収載する予定である。 それと並行して、中世に成立した『源氏物語』の古注釈書のうち、重要な位置にありながらも、未だに翻刻さえなされていないものに注目すべきであろうと考え、それらの注釈書に関する調査の準備をはじめた。特に、京都・陽明文庫のみに現存する『長珊聞書』(全53冊)は、室町末期までの諸注を集成する膨大な注釈書であり、注目に値するとおもわれた。『源氏物語』注釈史上とりわけ重要な「家」と目される三条西家の公条の講釈を聴聞した、長珊なる人物によってまとめられたものであるが、未だに充分な調査も翻刻もなされていない。 そこで、2003年12月、陽明文庫を訪ね、写本の調査にあたった。結果、その注釈内容は(先行する注釈の引用も含め)かなり詳細であること、殊に、他の古注釈では常に注記の分量が少ない「宇治十帖」に関しても、その量・質ともに充実していることなどが確認された。中世後期の『源氏物語』古注釈の展開を把握する上で、きわめて重要な注釈と考えられることから、全53冊、計3000丁(6000頁)を超える写本の紙焼きコピーの許可を申請し、かつはその翻刻・紹介についても許可を得ることとなった。2004年度以降、その翻刻作業に取り組むこととなろう。
|
Research Products
(1 results)