2004 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス王政復古期文学と都市民衆文化の関係に関する研究
Project/Area Number |
15720047
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
大西 洋一 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (10250656)
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Keywords | 同性愛 / 男性性 / 女性化 / 王政復古期演劇 |
Research Abstract |
本研究は、イギリス王政復古期以降の都市民衆文化の諸相、特にこれまで等閑視されてきた人々の集団とその文化を再考することにより、この時期の文学の読み直しを試みることを目的としている。今年度の研究においては、十八世紀イギリス文学研究における「男性性」再考の一環として、当該時期の文学における「性(sex/gender)」の規範を逸脱する人々の表象について、特に演劇ジャンルに焦点を当てて検討を行った。この時期の演劇においては「放蕩者(rake)」や「洒落者(fop)」といった特異な登場人物が頻繁に舞台に姿を現すため、王政復古期の「ジェンダー研究」はそのような人物像に集中する傾向がある(たとえば、Andrew P.Williamsなど)。しかし、「性」の規範、特に本来の「男性性(masculinity)」を逸脱する傾向を持つ登場人物として、今回注目したのは「舞踏教師(dancing master)」という存在である。William Wycherleyの芝居であるThe Gentleman Dancing Master(1672)はもちろん、William HogarthのA Rake's Progress(1735)のような絵画に至るまで、この時期の様々な分野に「舞踏教師」はその姿を現しているにもかかわらず、これまであまり論じられてはこなかった。確かに「舞踏」は「洗練さ(politeness)」を必要とするジェントルマンのたしなみとして重要視されたのだが、それを教える「舞踏教師」自身の階級的位置は不確かであり、Hogarthの絵画でしばしば諷刺されているように、彼らの過度の「洗練さ」は男性の「女々しさ(effeminacy)」につながると批判されている。階級とジェンダーの境界に位置する「舞踏教師」表象の考察は、この時期の「男性性」を検討するにあたりきわめて有意義な視点を与えてくれると思われる。
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Research Products
(1 results)