2003 Fiscal Year Annual Research Report
ユートピア思想の観点からの初期王立協会における文学と科学の相互依存性に関する研究
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15720048
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
川田 潤 福島大学, 教育学部, 助教授 (70323186)
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Keywords | ユートピア / 自然哲学 / 王立協会 / 科学と文学 / フランシス・ベイコン / ハートリブ・サークル / 科学史 / 言説 |
Research Abstract |
本年度は、研究課題のための基礎的な文献の整理・読解および理論的基盤の分類・整理にあたった。 基礎的な文献については、まずロンドン王立協会以前の「自然哲学」に関するテクストを渉猟、分析した。具体的には、フランシス・ベイコンの『森の森』と『ニューアトランティス』という両書物を検討することによって、「自然哲学」と「国家」がどのように結びつくべきであるかという問題意識の誕生の経緯を検討した。また、主に内乱期におけるコメニウス主義と王立協会との結びつきについて、『マカリア王国』を著したハートリブ・サークルと王立協会のメンバーとの人的交流の整理、検討を行うことで、大陸とイングランドを結ぶネットワークの存在を確認した。 初期王立協会と同時代のテクストについては、そこから排除されているスコラ哲学に基づく「自然哲学」思想、および、独自の「自然科学」を探る学問領域外の人々の「自然哲学」思想についても、史料の収集およびその整理を行った。それによって、一見すると力を失ったかに見えるスコラ哲学的な「自然哲学」が依然として大量に出版されており、強い影響力を持っていたことが明らかになった。 以上のような史料の検討、分析に加え、S.Shapinなどの科学史家の研究、Lisa Jardineなどの「文学」研究者による当時の「自然哲学」をめぐる歴史状況の整理と分析の理論的基盤を検討することで、この時代に「科学」と「文学」が融合することによって「言説の変位」が生じ始めていたという、基本的な分析の方向性を確認した。 来年度は、以上のような研究をふまえ、より具体的な分析にあたる予定である。
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Research Products
(1 results)