2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15720050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 修一 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (40345244)
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Keywords | カミュ / 反抗的人間 / テロリズム / 殺人 / 革命 |
Research Abstract |
本研究は、アルベール・カミュの著作『反抗的人間』(1951)に於ける、独自の歴史の見方を闡明しようとするものである。フランス革命の「王殺し」から、ロシア・テロリズムを経て、第二次大戦後の東欧のコミュニストの裁判・処刑に至るまでのテロル=殺人の系譜を辿ることによって、カミュは近代史を描こうとするのだが、そうした歴史観を理解するためには、まずテロリズムに関する一般文献、およびカミュが『反抗的人間』を執筆するにあたって参照した資料の調査が不可欠である。そのために、東京大学文学部図書館が所蔵していなかった、近代の革命と暴力の関係を考察したトクヴィルの全集を入手し、また日本では参照することができない文献の調査をフランスの図書館に於いて行った。 上記の文献調査の作業を進めつつ、本研究の目的と方向性を他の研究者にひろく示すために、日本フランス語フランス文学会秋季大会のさいに行われたカミュ研究会に於いて、「未来と殺人」と題する口頭発表を行った。この発表は、『ヒューマニズムとテロル』(1947)に於いて、モーリス・メルロ=ポンティが行った所謂「モスクワ裁判」の正当化と『反抗的人間』とがどのような関係にあるかを探ったものである。従来このエッセイが惹起したサルトルとの論争ばかりが注目されてきたが、『反抗的人間』に於いて、カミュが論駁しようとした最終的な仮想敵は、メルロ=ポンティ的な共産主義の擁護であることを示した。こうした視点に立てば、『反抗的人間』に於いて描かれたテロルの歴史とは、メルロ=ポンティの議論がどのように生じてくるのかを問う或る種の系譜学として読むことが可能である。この考察は、発表原稿に加筆して、来年度論文のかたちで公にする予定である。
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Research Products
(1 results)