2004 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭ロシア文化・思想における「近代の超克」と新しい世界観の模索
Project/Area Number |
15720060
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 正則 九州大学, 大学院・言語文化研究院, 助教授 (10346843)
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Keywords | ロシア / 世紀転換期 / 思想史 / 哲学 / 近代の超克 / マルクス主義 / 象徴主義 |
Research Abstract |
本年度の研究計画は、26世紀初頭ロシア知識社会における「新しい世界観」をめぐる論争を分析し、以下の2点を解明することであった。1.論争を可能にした共通の問題意識・精神基盤、2.論争の論点と対立点、論争の構図。 具体的な研究実施にあたっては、特に注目すべき以下の2つの論争に着目した。 1.象徴主義詩人・芸術理論家による現実世界の変革理論「神秘的無政府主義」と、それをめぐる象徴主義諸派、マルクス主義諸潮流間の知的対話と論争。 2.ロシア・マルクス主義における3つの潮流(プレハーノフの唯物論、ベルジャーエフら「道標派」の新カント派・観念論・宗教思想、ボグダーノフに代表される「ボリシェヴィズム」の経験一元論)の間の哲学論争。 成果として以下の3点を挙げることができる。 1.象徴主義芸術理論における「近代超克」理論が解明された。その近代文明批判の基本線(実証主義、科学的合理主義、経済的決定論、機械論的宇宙論、主客二元論等々の否定)が「道標派」やボリシェヴィキのそれと一致することが明らかになった。これにより、20世紀初頭のロシア知識人が、表層の立場の相違(マルクス主義、新カント派観念論、象徴主義)を超えて共有した近代批判の視角の全体像がほぼ把握できた。 2.象徴主義詩人とボリシェヴィキがともに世界変革の手段として着目する芸術とりわけ演劇の機能についての双方の見解の共通点と相違点がより明確化した。 3.ロシア・マルクス主義の3潮流の論争を、世紀転換期における精神の危機(近代的世界観の危機)に対する解決策(「新たな世界観」の創出)をめぐる論争として再解釈した。特に人間と宇宙との関係(認識の能動性)が大きな論点であることを解明した。
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Research Products
(2 results)