2004 Fiscal Year Annual Research Report
プロネーシスの学としての文学研究のための基礎的研究-音と言葉の関係をもとにして-
Project/Area Number |
15720062
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
黒子 康弘 東京都立大学, 人文学部, 助手 (50305398)
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Keywords | プロネーシス / 感性社会学 / テクノロジー / ルードルフ・カスナー / モード / 19世紀 / ライフスタイル / 法 |
Research Abstract |
本研究は、文学を、あるシステムにおける構築と解体のせめぎあいの言語化と定義し、この観点から音楽と文学の関係を照射し、文学がシステムとしての音楽をどのように批判的に、あるいは逆に補完的に記述してきたかを捉えようというコンセプトを出発点とする。本年度はルドルフ・カスナー研究を継続しつつ、狭義の「音楽」から離れてて、世界そのものの律動・韻律、事物の尺度、ロゴス、音、さらに慣習、責任、法、ライフスタイル、モード等、つまり本研究でいうところの「プロネーシス」に関連して、広く多様な思考のモデルを探った。その思考の一部について、当研究の奥行きと幅を持たせるために一昨年より入会している日本感性工学会の年次大会(於:工学院大学)で、『傾倒の感性-21世紀の学的統合と感性社会学』という題目のもとで口頭発表を行った。日本感性工学会は、21世紀の情報化社会を担う文化と科学技術を「感性」を中心に発展させるべく、社会科学、人文科学、自然科学、工学ならびに各種の技能を融合し、既存の学問領域では捉えられないような複雑な問題を扱い、その成果を学術・社会・文化・産業に還元できるよう努めているが、私の口頭発表は、ドイツ文化学・文学・社会学を学んできた立場から、そのような分野横断的・学際的な研究に貢献しようとするものであった。さらに本年度は、当科学研究費補助金の研究テーマに密接に関係するものとして、論文『ライフスタイルと感性-感性社会学の一視座』を、日本感性工学会感性社会学部会編『感性と社会』(論創社2004)に執筆したが、ここではスタンダール、カスナー、ニーチェなどの文学者・文化哲学者の言説を素材として、19世紀から20世紀への生活空間と感性の変容のメカニズムを、ライフスタイル、テクノロジーやモードとの連関のもとで分析した。さらに上記著作においては、チューリッヒ造形芸術大学ジャクリーヌ・オッテン氏の寄稿論文『西と東を結ぶ道-モードの視点から見た「感性」の機能』を翻訳した。
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Research Products
(1 results)