2004 Fiscal Year Annual Research Report
「満洲国」の中国語文学作品に見る日本人・日本語像と複数言語状況
Project/Area Number |
15720069
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 雄一 千葉大学, 国際教育開発センター, 助教授 (30305403)
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Keywords | 中国文学 / 近代文学 / 植民地 / 満洲国 / 淪陥区 / 言語政策 / 民族表象 |
Research Abstract |
(1)科研費受給初年度(2003年度)に購入した、「満洲国」期あるいは「満洲国」以前に出版されていた中国語文学雑誌と中国語新聞のマイクロほかを参照し、またこれまで継続作成している「満洲国」期の文学雑誌総目次データベースをもとに原資料にあたり、論文を執筆した。論文名は、「「いま、ここ」からの私的な旅-石軍、金音、爵青らのテクストを例に」。これを『満洲国の文化-中国東北のひとつの時代』(せらび書房、2005年3月25日刊行)に収録する形で公刊した。日本語で語られた「満洲」、「満洲国」という地政学的空間のなかで、中国人作家たちがおのれの起源である「中国(語)」空間にこだわって創作した中国語文学作品を、当時の支配言語であった日本語空間と比較して論じた。 (2)初年度の研究過程で注目した「満洲国」期の作家でなお北京に健在の梅娘氏を、研究代表者が運営にも加わる「満洲国」文学研究会の定例研究会(2004年9月11日、明治学院大学会場)でお招きし、講演会を開催した。「満洲国」期の彼女の文学活動、日本側文化機構・文化人との接触体験、についてお話し頂いた。この内容は『中国文芸研究会会報』に報告した。 (3)科研費を利用した研究出張で北京に赴き、上記の梅娘氏を再び訪ねて関連問題のヒアリングを行なった。 (4)上記出張においてさらに、研究代表者が小説訳本出版を計画しているやはり「満洲国」下の作家、爵青のご遺族を訪ねて関連問題のヒアリングを行い、訳本出版の許諾を得た。 (5)(1)にも述べた資料を使用しつつ、「満洲国」期の中国人作家の小説集・詩集・エッセイ集についての解説紹介文を執筆。これは植民地文化研究会編『東北淪陥時期文化細目』(仮題)という形で、2005年5月に不二出版から近刊の予定である。
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